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2015年9月1日火曜日

エピローグ パリでの贈り物(後編)

エピローグ パリでの贈り物(後編)



「素敵な人だね」

マーク「とんだ秘密をバラされちゃったけど…」

リムジンの中、マークは少し恥ずかしそうにしていた。

(留学先でも私の話をしてくれたなんて、嬉しいな)



次に私たちがやってきたのは凱旋門。
せっかくだからと272段のらせん階段をのぼり、上からの景色を楽しむことにした。
息を切らせて、2人、ようやくテラスに到着。

「わあー、パリがよく見渡せる!」

マーク「エッフェル塔みたいに高いところもいいけど」
   「これくらいの高さの方がパリの真ん中にいるって実感できるでしょ?」

「うん…いい眺め」

凱旋門から放射線状に伸びる幾つもの通りを見下ろし、
頰にそよぐ風を受けながらパリを全身に感じる。

(マークと2人でパリにいるなんて…)
(なんだか、嬉しくて自然と頬っぺたが緩むな)

そんなことを思っていると、隣のマークが私のほっぺをつつく。

「私ににやけてる?」

マーク「うん、にやけ顏も可愛い」

そういってマークは、私の頰をそっと包み込む。

マーク「他にも見せたいところがあるんだよね」

「もっとにやけても、いい?」

マーク「いいよ」
   「少し遠いけど、大丈夫?」

「うん!」

私たちはパリの近景を堪能したあと、またリムジンへ乗り込んだ。




リムジンの中では、マークの留学してた頃の話や、セリーナやブレアの話など、
いくらでも湧き出す泉のように2人の会話は途切れることがない。
ところがしばらくして、私は少し体調が優れないことに気づく。

(…車酔い、したかも)

なんとなく気持ちが悪くなってきたけれど、気にしないようにしていた。

マーク「そういえば、パリに留学し始めた頃、ずっと勘違いしてた言葉があってね」

「うん…」

マーク「雨が降ってるはイルプル、彼は泣いているがイルプルールなんだけど、俺、逆に覚えてて」

「へえ…」

マーク「イルプルって言われるたびに『泣いてないし!』とか返してたわけ…」
   「ん?⚪︎⚪︎?」

マークが私を覗き込むようにしてみる。

マーク「どうした?気分悪い?」

「ちょっとだけ、車酔いかも」

マーク「それはマズイな」

「大丈夫だよ、すぐに治る」

マーク「ダメ。顔がどんどん青くなってきた。近くで降りよう」

「…ごめん」




リムジンを降り、外の風に当たる。

マーク「少しだけ深呼吸してみよっか」

「うん…」

澄んだ空気を深く吸い込み、大きく吐き出す。
ほんの少し気分がよくなったけれど、まだ胸のあたりが気持ち悪く、頭も重い。

マーク「ちょっとだけ、歩こう」

マークに手を引かれ、歩き出す。
すると、目の前に海が見えてきた。

「わあ、海だ…」

マーク「フランスの西海岸だよ」

「そんなにリムジンで走ったんだー」

マーク「時差もあるし、これだけリムジンに乗ったら具合も悪くなっちゃうよね。ごめん」

「ううん、海が見られると思ってなかったから、嬉しいよ」

私がそういって笑うと、マークは眉を寄せて微笑む。
2人海辺のベンチにたどり着いた。

マーク「ここで休もうか」

「うん」

するとマークはポケットからハンカチを取り出し、そっとベンチに敷く。

マーク「どーぞ」

「ありがと…」

静かに腰を下ろす。

「前にもこうしてくれたよね。セントラルパークで」

マーク「こうするって…?」

「ハンカチ、敷いてくれた」

マーク「ああ、ハンカチのことか」

マークはこともなげにそう答える。

「日本じゃこういうレディファーストな文化、あんまりないから…」

マーク「そうなの?」
   「大切な彼女のためだから当たり前だよ」

そういって私の頭をそっと抱き寄せ、肩にもたれさせてくれる。

「寄りかかってると…だいぶラク」

マーク「好きなだけ使っていいよ、俺の肩」

海からの風を受けながら、私はマークに身を委ねてボーッと景色を眺める。
マークは時々私の髪を撫でながら、静かに様子を見守っていてくれた。
しばらくして、胸のつかえがとれていることに気づく。

「…もう、大丈夫かも」

マーク「そう、よかった」

リムジンに戻り、ドアを開いて私を乗せると、マークはニコッと微笑む。

マーク「すぐ戻ってくるから、ちょっと待ってて」

「…うん?」

不思議に思いながらリムジンでのんびりしていると、程なくしてマークは戻ってきた。

「何してたの?」

マーク「秘密!」

「あやしいなー。フランスの女の子ナンパしてきた?」

マーク「あ、ばれた?」
   「さっきのマーケットにいたアイス売り場の子が超可愛くて」

海辺からリムジンへ戻る途中、いろんな店が集まるマーケットを通ってきた。

(手前にアイス屋さんがあったのは覚えてるけど…)

「あれ、お婆さんじゃなかったっけ?」

マーク「美熟女だよ?」

「ふふ…もう。油断も隙もないよね、マークって」

軽口を叩けるくらいにまで私は回復していて、マークと他愛のない話をしているうち、
リムジンの外は日が落ち始める。

マーク「あ…もうすぐだな」

窓の外を見ながらマークはそう言った。
やがて、窓に映る景色に、私は目を見張る。

(これって…)




リムジンから降り、目の前に広がる絶景に私は息を漏らした。

「すごい…」

それは、ライトアップされたモン・サン=ミッシェル。
夜の海に浮かび上がる幻想的な城。

マーク「ここの夜景を⚪︎⚪︎にどうしても見せたかったんだ」

「なんだか、現実の世界じゃないみたい。ホントに綺麗…」

神々しいその光景に圧倒されていると、マークが私の目を覗き込む。

マーク「少し目をつむって」

「え…?」

マーク「3つ数える間だけ」

「わかった」

言われた通り目を閉じて3つ数えようとすると、甘いオレンジの香りがふわっと漂ってきた。
私は目を閉じたまま、思わずこぼす。

「なんだかいい香り…」

と、次の瞬間、唇に優しいキスの感触。
ビックリして目を開けると、マークはニにっこり微笑んで華麗な花冠を私の頭に乗せる。

「どうしたの…これ」

マーク「神様がくれた」

「また、そんなこと…」

マーク「オレンジの花でできているんだ」

「それでいい香りがしたんだね」

マーク「オレンジの花言葉は『純粋』。⚪︎⚪︎にピッタリだと思って…」

その言葉が照れ臭くて、私は少し俯いた。

マーク「ちなみにヨーロッパの花嫁は、婚約してからずっとオレンジの花を男性からもらう風習がったんだって」

「へえ…」

マーク「オレンジには、花嫁を守って幸せに導く力があるって言い伝えが、ヨーロッパでは古くからあるらしい」

「じゃあ、こんな素敵な花冠もらったら、花嫁みたいだね」

マーク「もちろん、俺の未来の花嫁だもん」

「え…」

顔が一気に赤らんだ。

モン・サン・ミッシェルの明かりに照らされ、二人は見つめ合い、やがて唇を重ねる。
それは、オレンジの香りのするとても甘いキス。

マーク「…ずっと前から、⚪︎⚪︎が好きだった気がする」

「大げさ。出会ったのは学校に入ってからだよ」

マーク「そっか…」

マークはフッと笑みを漏らし、私の髪をそっと撫でる。

マーク「でも、⚪︎⚪︎のこと大好きだから…これからもずっと…」

再び二人の唇が重なり、大人のキスになった。
胸のドキドキがどんどん高まる。
私はマークにしがみつくようにして、その熱いキスを受け止めていた。



パリの楽しい休日も終わりを迎え、二人、シャルル・ド・ゴール空港へ到着。
私の荷物を持ち上げ、チェックイン手続きをしてくれるマーク。
パパに約束した通り、私たちは全ての朝を別々の部屋で迎えた。



パリからの帰りの飛行機の中。
俺は、隣で爆睡する⚪︎⚪︎を見つめながら、あの日のことを思い出していた。

(あの時と…おんなじだ)



________________________________



ちょうど1年前。
成田からJFKへ向かう飛行機の中、俺たちは最初の出会いをした。
⚪︎⚪︎はきっと、覚えてないだろうけど。
隣に誰が座っているかなど気にする様子もなく、⚪︎⚪︎は夢中で手紙を書いていた。

(…お母さんへ、か)

少しくらいなら日本語が読める。
いま発ったばかりの日本に残した母親へ手紙を書いているのだろう。
何度も書いては消し、消し方が悪くて便箋にしわが入っては、また一から書き直す。

(親思いの優しい子だな…)

「…よし」

書き終えたのだろうか、満足そうに読み返している。
そして、書き終えた手紙をカバンにしまい込み、しばらくすると熟睡していた。




_______________________________




(いま思えば…あの時から、好きになりそうな気がしてた…)

俺は寝ている⚪︎⚪︎の頭を自分の肩に乗せ、額に軽くキスをした。








エピローグ パリでの贈り物(前編)

エピローグ パリでの贈り物(前編)




「え…パリ?!」

思ったより声が出てしまい、私は慌てて口をふさぐ。

マーク「そう、一緒にどうかと思って」

マークと私は、残り少ない夏休みをどう過ごそうか、カフェで相談していた。

マーク「案内したいところがいっぱいあるんだよね」
   「留学してる間、綺麗な場所とか面白いスポット見つけるたび」
   「⚪︎⚪︎を連れて来たいなって、そればっかり思ってた」

「うれしいな…」

頭に浮かぶのは、エッフェル搭やシャンゼリゼの石畳。
飛び交うフランス語に、街行くお洒落な女の子。

「パリかぁ…いいね」

と、次の瞬間、頭の中のパリの街並みに突然パパが登場。

(忘れてた…!)

マーク「…ん?どうした?」

顔色を変えた私を心配そうにのぞこきこむマーク。

「最大の難関、パパを突破しないことには…海外旅行なんて門限どころの話じゃないし」

マークは腕組みをして宙を見上げる。

マーク「そうだった…」

するとしばらくして、何か思いついたようにハッと私を見る。

マーク「俺が一緒にお願いしに行ってもいい?」

「え?!」

マーク「⚪︎⚪︎の安全を守るって、俺が説得する!」

(パパ、マークびいきだから私が説得するよりは効果ありそうだけど、大丈夫かな…)




__________________________________





早速、私はマークを連れて家へ向かい、仕事から帰ってきたパパを待ち受ける。

「パパ、おかえり!」

マーク「おかえりなさい」

マークまで出迎えてきたことにパパは驚きながらも頬をほころばせた。

パパ「やあ、マーク。来てたんだね。元気かい?」

マーク「はい、お父さんも元気ですか?」

パパ「最近仕事が忙しくてね、少々疲れ気味だよ」

マーク「ならちょうど良かった」

そういってマークが手を差し向けたテーブルを見て、パパは目を丸くする。
ダイニングテーブルに所狭しと並んだたくさんの料理。

パパ「…どうしたんだ?これは」

「パパの好きなメニューを取り揃えてみたの。ほら、最近できた日本食のお店、パパ行きたがってたでしょ?」
「そこ、お店のメニューがデリバリーできるから、頼んでみたってわけ」

パパは嬉しそうに頷くも私たちを見て怪訝そうに眉をひそめる。

パパ「ふたりとも、そういうのを張り付いた笑顔というんだぞ」

「え?な、なんのこと?」

パパ「さては何か…裏があるな?」

「そんなこと言わないで、とりあえず食べようよ、ね?ハイ、上着は私が」

マーク「俺はカバンを預かります」

甲斐甲斐しく世話をする私たちにパパは首を傾げながらも、席に着いた。

「いただきまーす。わ、サバの塩焼きおいしい」

マーク「トーフハンバーグもおいしいね」

パパは黙々と食べ始め、しばらくしてお箸を置いた。

パパ「この店の料理が上手いのはよくわかった。で、君たちの要求は何かな?」

マークはお箸を置くと、まっすぐにパパを見据える。

マーク「残りの夏休みを利用して…⚪︎⚪︎をパリに連れて行きたいと思っています」
   「その許可を、頂けないかと…」

パパ「パリ…マンハッタンにあるフランス菓子の店名にそんなのがあったけど、そこのことかな?」

「そんなわけないでしょ!」

パパ「だろうな」

マーク「⚪︎⚪︎の安全は、俺が必ず守ります」
   「治安の悪いエリアには近づきませんし、危険を伴うような行動は一切しませんので…」
   「お願いします!」

パパは大きく息をつき、顎に手を当てる。

パパ「その…なんだ。部屋は…どうする」

マーク「ムーリスかフーケッツを考えています」
   「フランスでもパラスと呼ばれる最高位のホテルですので、安全性も…」

パパ「いや、その…あれだ。2人は、同じ部屋なのか?」

マークは慌てて首を横に振る。

マーク「い、いえ、もちろん別々です!」

パパ「…そうか」

パパはホッとしたようにお茶を飲むと、小さく息を吐く。

パパ「まあ、この夏は⚪︎⚪︎もインターン研修で頑張ってたみたいだし」
  「マークも留学で勉強尽くしだったろうから…」
  「2人で楽しんでくるといい」

「やったー!ありがとう、パパ」

マーク「ありがとうございます!」

私たちは手を取り合って喜んだ。



_________________________





パパの了解を得た私たちは、とうとう出発当日を迎える。
マークの家のハイヤーがうちのアパートメント前までやってきた。

マーク「荷物はこれだけ?」

「うん、ありがとう」

運転手さんが私のトランクを車へ積み込み、マークが座席のドアを開けた時、携帯が鳴る。

マーク「なんで父さんから…」

マークは不思議そうに電話に出た。

マーク「ハイ…父さん」
   「…え?!いや、ちょっと…」

焦った様子で天を仰ぐマーク。

(どうしたのかな?)

マーク「…もう、空港へ向かおうとしてるだけど」

動揺するマークの様子に、嫌な予感が頭をもたげる。

(ひょっとして…パリ行きを反対されてるとか?)
(突破するのは、うちのパパだけじゃなかったのかも…)

するとマークは携帯を耳から離し、困ったように息を吐く。

マーク「⚪︎⚪︎…ごめん」

「…やっぱり」

マーク「JFK空港じゃなくて、小型機の飛行場へ向かってもいい?」

「え?」

マーク「⚪︎⚪︎のお父さんが心配してたって話をこないだしたからか」
   「うちの父さんが自家用ジェットを出すって言って聞かないんだ」

「じ、自家用ジェット?!」

マーク「うちのジェットは空軍出身の優秀なパイロットを配してるから」
   「こっちの方が安全だ、大事なお嬢さんをこの一般の旅客機なんかに乗せられないって」
   「言ってるんだけど…」

「いやいや、一般の旅客機で十分だよ!ほんとに!」

マーク「…だよね」

マークは再び父親に挑む。

マーク「自家用ジェットは⚪︎⚪︎にかえって気を遣わせるから…うん、そう、一般に旅客機で…」
   「え?ファーストクラスにしろって…?いや、だから父さん…」

私は隣で大きく首を横に振る。
ようやく父親の説得を終えたマークは、電話を切り大きなため息をついた。

マーク「やれやれ。うちの親の説得までいるとは想像してなかったな」
   「じゃ、行こうか」

私は笑顔で頷いた。



______________________________





ハイヤーが走り出すと、マークは何か思い出したように口を開く。

マーク「あ、そういえば父さん、あのパジャマ気に入ってよく使ってるよ」

「ほんと?嬉しいな」

私はマークのお父さんの誕生日パーティーに、ささやかながらプレゼントを持参していた。

マーク「娘がいたらこういうものをくれるんだな、とか言って喜んでた」

「そっか…よかった」

2人の父親を説得し終えた私たちは、晴れて、フランス、パリへと旅立つ。




8時間のフライトを経て、パリのシャルル・ド・ゴール空港に到着。
さっそくリムジンでパリの中心へ向かう。




マーク「⚪︎⚪︎、行きたいところがあったら言っておいて?スケジュールするから」

「でも、有名どころしか知らないしなー。シャンゼリゼ通りとか」

マーク「いいんじゃない?」
   「ただの通りの名前だけど」

「ほら、馬鹿にしたー!」

マーク「してないよ」
   「他には?」

「やっぱり、エッフェル搭とか」

マーク「ただの電波塔だけどね」

「もう!」

マーク「うそうそ。両方とも実際行ってみるとすごくいい雰囲気だよ」

マークは笑いながら、運転手に行き先を指示した。




_____________________________




リムジンからシャンゼリゼ通りに隣立つ。
すると、思い描いていた通りのお洒落な雰囲気がそこに漂っていた。

「わあー、素敵。ちょっとしたカフェも可愛いし、みんなのファッションも個性があっていいなー」

私は興奮しながらシャンゼリゼ通りを歩く。
ふと、視線を感じて隣を見上げた。

「…私、はしゃぎ過ぎ?」

マーク「ううん」

「でも…ずっと見てる」

マーク「⚪︎⚪︎が楽しそうにしてるの、見てたいから」

マークはそう言いながらも私の方ばかり見つめてくる。

「石畳につまずくよ?」

マーク「大丈夫」

そういって私の方を見ながらも、ちゃんと信号の前で足を止めた。

マーク「向こうの通りに、俺が住んでたアパルトマンがあるんだけど、見る?」

「見てみたい!」

(マークがどんな留学生活を送ってたか、興味あったんだよね)

私たちはマークが留学中に身を寄せていた家具付きアパートの前に着いた。




想像していたよりも質素な作りに驚く。

「へえ…もっと豪華なアパルトマンかと思ってた」

マーク「他の学生と同じ環境で学びたかったから、ここにした。おかげで町の人たちとも触れ合えたし…」

と、その時、

??「よお、マーク!帰ってきたのかい?」

そのフランス語に、マークの顔がパッと華やぎ、後ろを振り返る。

マーク「やあ、ロドルフ!」

マークはロドルフというそのお爺さんと懐かしそうに抱き合った。
そして私を紹介するように、こちらに手を向けていう。

マーク「ロドルフ、約束通り連れてきたよ。俺の大切な…」

ロドルフ「⚪︎⚪︎だろ?」

「え…?」

フランス語だけど、ロドルフさんが私の名を呼んだのはわかった。

(このフランスのお爺さんが、私の名前を知ってる…?)

するとロドルフは、フランス語で何か私に言って、ウインクをする。

(…なんて言ったんだろう)

「ねえ、マーク、今なんとおっしゃったの?」

マーク「え…今?そんな…たいしたことは…」

マークが頭を掻いていると、ロドルフはフランス語訛りの英語で言う。

ロドルフ「キミは幸せだね。一人の男にこれだけ愛されて」

マークは少し照れたようにロドルフを手で制する。

マーク「余計なこと言わなくていいから」

ロドルフ「だってフランスじゃ、こういう美男は浮気するもんだ」
    「なのにマークときたら、日がな一日、キミのことを想いながら映画の勉強さ」

マーク「ロドルフは俺のアパルトマンの大家さん。本当に人がよくて、いろいろお世話になったんだ」
   「奥さんの作るチキンポトフは最高に美味しい」

ロドルフ「俺のことも褒めておいてよ」

「ふふ…」

マーク「ロドルフには俳優の才能があって…」


「あ!」

マーク「思い出した?」

「マークのショットフィルムに出てきた…あのお花屋さん!」

ロドルフ「よく覚えていてくれたね、⚪︎⚪︎!」

ロドルフは嬉しそうに目尻を下げると、ちょっと待ってというように私に掌を向ける。
しばらくすると、可愛いガーベラの花を手に戻ってきて、私の髪にさしてくれた。

ロドルフ「うちの庭で育ててるガーベラだよ」
    「現実には花を売るよりこうして可愛いお嫁さんに花をプレゼントするのが得意さ」

「ありがとうございます」

マーク「⚪︎⚪︎、よく似合ってる。可愛いよ」

ロドルフ「マーク、二枚目ぶってないでもっと褒めてやりな」
    「留学中は毎日⚪︎⚪︎の話を聞かされたからな、俺の方がうまく褒められるかもな」
    「ええと、なんだ、笑顔が可愛くて、優しくて…」

マーク「ロドルフ!それは言わない約束だろ!」

ロドルフはおどけたように肩をすくめる。

ロドルフ「マーク、あの花の話、覚えてるか?」

マーク「…もちろん」

「あの花って?」

マーク「ああ、えっと、ロドルフは花に詳しくて…いろいろ教えてくれたんだ」

(何の花だろう…?)

ロドルフ「じゃあな、マーク、また⚪︎⚪︎と遊びにおいで」

マーク「うん、また必ず来るよ」

私たちを見送り、ロドルフはいつまでも手を振っていた。



To Be Continued…….


SH 第15話 リスタート(後編)

SH第15話 リスタート(後編)


披露宴会場に戻り、相変わらずご機嫌斜めなブレアとシングル席で華麗な料理をいただく。
宴もたけなわとなり。ダートの付添人、チャックのスピーチが始まった。

チャック「父は欲しいものは必ず手に入れます。リリーも例外じゃなかった」
    「彼女との結婚に漕ぎ着けた父から学んだのは、忍耐の大切さです…」

そこまで言って、チャックは用意していたメモから目を離し、
ブレアの方を見つめながら話し始める。

チャック「…つまり、真実の愛は、あきらめるなということです」
    「たとえその相手が、あきらめてくれと、泣いて頼んでも」

ブレアは、まっすぐにチャックを見つめ返している。

チャック「そしてリリーから学んだのは、許すことの大切さです」
    「いつの日か僕にもすべてを許してくれる相手が見つかることを、心から願っています」
    「新郎新婦に…乾杯」

会場から暖かい拍手が起こり、やがて新郎バートは新婦のリリーの手を取りダンスを始める。
大人のカップルをうっとり眺めていると、となりのブレアがすっと立ち上がった。
そしてチャックの元に歩み寄り、2人はダンスを始める。
チャックは穏やかな表情でブレアを抱き寄せ、ダンスをしながら2人はキスをした。

(チャックもちゃんと掴んだんだ…大切な人を)
(私は…掴むことできなかったんだな…)




____________________________




夏休みも終わりに差し掛かった頃、
ハンプトンズの別荘に戻ったセリーナに誘われ買い物に出かけた。

セリーナ「⚪︎⚪︎は夏休みどう過ごしてたの?」

「ヴォーグの編集部でインターンシップ」

セリーナ「すごいじゃない。ヴォーグって大学以上しかインターン受入れて
ないんじゃなかった?」

「…マークが、口添えしてくれたみたいで」

セリーナ「さすがマーク。キメるときはちゃんとキメてくれるね」

「ほんとマークには感謝してる。すごく勉強になったし」
「セリーナは?ハンプトンズはどうだった?」

セリーナ「この夏は静かだった。別荘にこもりきり」

「ダンと一緒に行ったんじゃ?」

セリーナは複雑な表情を浮かべ、首を横に振った。

セリーナ「私たち、別れたんだ…」

(え…)

驚く私に、セリーナはつくろうように笑顔を見せる。

セリーナ「期待通りの私じゃなかったことが、ダンは許せなかったみたい」
    「結局、出会った頃ダンに言われた『住む世界が違う』って言葉…その言葉に私たちはずっととらわれてた」

(住む世界の違い…超えるのって、やっぱり難しいのかな)

するとそのとき、セリーナがニューススタンドを指差す。

セリーナ「ねぇ、あれって…マークのことじゃない?」

スタンドに近づいてみると、セリーナの言う通り、並んだ紙面にマークの記事があった。

(また…ニューヨーク・ポストだ)

もう懲り懲りだと思っていると、セリーナはその新聞を購入。

セリーナ「これ、いい記事だよ」

「え?」

見ると、それはマークのパリでの活動内容を報じるものだった。

セリーナ「マークが撮ったショットフィルムがフランスで注目されてるんだって!」

「ほんとだ。すごい…!私も頑張らないとな」

マークが夢に近づいていことに、私は沸き立つような喜びを覚える。

セリーナ「そういうのいいね。お互いを褒め合える関係」

「…うん」

セリーナ「いつか…2人がまた、前みたいに戻ったらいいのにな…」

と、次の瞬間、2人の携帯が同時に音を鳴らす。

『ゴシップガール』だ…)

私たちは携帯を見て、ハッと息を飲んだ。



ゴシップガール『ニースの別荘にいる友達から入手した情報!』
       『マーク、留学先のパリでも相変わらずみたい』
       『早速、フランスの新進アーティストとイイ仲なんだって!』
       『でも今回は火遊びじゃないっぽい』
       『2人が結婚準備を進めてるって、現地の有力紙も伝えてるよ』



(…結婚準備?)

セリーナ「こんなのガセだよ」

「…」

私は震える心を必死に鎮めようとしていた。




_______________________





翌朝、私はセリーナの家で目覚める。
『ゴシップガール』の記事以降、抜け殻のようになった私を心配したセリーナが、
家に泊めてくれたのだった。

セリーナ「⚪︎⚪︎…大丈夫?」

「うん、よく眠れた。ありがとね」

本当は、ほとんど眠ることができなかった。

(でも、セリーナがそばにいてくれて助かったな…)



セリーナと別れ、私はセントラルパークの芝生に腰を下ろし、昨日の新聞を改めて読み返す。
学校のプログラムの一環として撮ったマークのショートフィルムが、現地の映画関係者の目に留まり、
フランスの小さな映画館で上映され話題になっているという。

(…良かったね…マーク)

夢を語るマークのいろんな表情が思い出される。



マーク「恵まれた環境にいることはわかってるけど」
   「俺は、真っ白な状態から本当の実力で勝負して、そこで認めてもらいたいんだ」

マーク「そこまでに熱中できるも何かって、すごく尊いものだと思うんです」
   「それだけの情熱を注げられることを仕事にするのは、最高な幸せなことだと、俺は思います」

マーク「やらないといけないことがあるから。だから…ごめん」



(ちゃんと…夢に近づけて良かった…)

記事を読み進めていくと、最後にはやはり、昨日『ゴシップガール』に書かれていた美人アーティストとの
結婚についての言及もあった。

(…綺麗な人)

相手の女性の写真をぼんやりと眺める。
するとその時、バッグの中で携帯が鳴る。
その画面に表示された名前に、私は目を見張った。

「…マーク?」

マーク「⚪︎⚪︎、久しぶり」

「久しぶり…だね」

マーク「元気?」

「…うん」

マーク「もう夏も終わりだね」

「そうだね…」

私は複雑な思いで、とりとめのない会話を続けていた。

マーク「で、そろそろ…好きな人とかできた?」

「何でそんなこと聞くの?信じられ…」

と、その時。

目の前の芝生に影がさす。
顔を上げると…そこにはマークが立っていた。
マークは電話をポケットにしまい、クスッと笑う。

マーク「怒るってことは…まだ少しは好きでいてくれてるのかな」

「うそ…」

マークの優しい微笑みを前に、私は呆然とただ固まる。
言葉にならない感情が込み上げ、気がつくと頬には涙がこぼれ落ちていた。

(ずっと…会いたかった…)

マーク「⚪︎⚪︎…」

マークは切なそうに眉を寄せ、私の頭にそっと手を置く。
ふと、私が膝の上に広げていた新聞に気づくと、手に取り上げる。

マーク「『ゴシップガール』より正確さに欠けるな」

そう言って呆れたように笑うと、近くにあったダストボックスに新聞を捨てた。

「…記事の内容、間違ってるってこと?」

マーク「正しい部分もある。俺のショートフィルムの話と、彼女が才能あるアーティストだってこと」
   「でもそれ以外は嘘。俺には一切興味ないし」

「どうして断言できるの?」

マーク「彼女には素敵な恋人がいる。同性のね」

「…そうなんだ」

(なんだろ…すごくホッとした)

「あ…」

マーク「ん?」

「今更だけど…おかえり」

マーク「…ただいま」

マークはにっこりと微笑んで前にしゃがみこむと、私を両腕でギュッと抱きしめる。

マーク「パリで必死になって勉強して、自分の力を試すことができたよ」
   「何の肩書きもなしに、フラットな状態から闘えた。自分のやりたいこともさらに明確になったし…」
   「⚪︎⚪︎を好きだって気持ちも、一瞬だって揺るがなかった」

(え…)

マーク「あの時、⚪︎⚪︎を守れなかったのは、自分にまだ自信がなかったからだと思う…」
   「でも、もう俺には何の迷いもないよ。自分にとって大切なもの」
   「絶対に譲れないものがはっきりとわかったから」

「マーク…」

マークは私の涙を優しく拭い、じっと目を見つめる。

マーク「もう絶対、⚪︎⚪︎に悲しい涙を流させたりしないよ…」

そう言われ、私はまた涙があふれてしまい、困ったように笑うマーク。

マーク「⚪︎⚪︎…立てる?」

「え?」

マークはそっと私の手を取った。

マーク「これから、父さんの誕生日パーティーがある。⚪︎⚪︎にも来てほしいんだ」



_________________________




それから私はマークが用意してくれていたドレスに着替え、
マークのお父さんの誕生日パーティー会場に着いた。
隣に座るマークはジョークで笑わせてくれたりするけど、
私は場違いなところにいる気がして恐縮しきり。
パーティーも佳境に差し掛かった頃、マークはそっと私に耳打ちする。

マーク「もう少しで始まるよ」

しばらくすると会場簿照明が落とされ、スクリーンに映像が映し出される。

「これって…」

それはパリで話題になっているというマークが撮ったショートフィルムだった。
中央テーブルに座るマークのお父さんは、真剣な眼差しでスクリーンを見つめる。
やがて上映が終わると、会場には割れんばかりの拍手が沸き起こった。
司会者に促され、ステージへ上がるマーク。

マーク「まだまだ稚拙な作品ではありますが、心血を注いでつくりました」
   「おかげさまで、パリの小さな映画館ではロングラン上映されています」
   「父に笑われるかもしれませんが、これが私からの父への心からのお祝いプレゼントです」

マークはお父さんをまっすぐに見つめ、話を続ける。

マーク「私が目指す場所は、尊敬する父や母が愛してきた映画業界です」
   「でも私の望む仕事はやはり、経営ではなく、映画をこの手で作ることなんです」
   「だから…父の会社の跡を継ぐのは、ここで正式に、辞退させてください」

そういってマイクを置くと、マークはお父さんの元へ歩いていく。
マークのお父さんはため息をつくと、どこか誇らしげな表情でマークを迎える。

マーク「父さん、いつか俺を監督として使ってね」

ケビン「まったく…生意気なヤツだ」

そういって、マークのお父さんは優しい微笑みを浮かべた



マークは私の元へ戻ってくると、そっと私の手を取る。

マーク「⚪︎⚪︎…ちょっと来て」



手を引かれ会場を出ると、マークはまっすぐに前に立つ。

マーク「はぁ…やっと言える」

天を仰ぐようにそう漏らすと、私の目をじっと見つめる。

マーク「聞いて?」

「…うん」

マーク「⚪︎⚪︎、愛してる。ずっと、俺のそばにいて…」

私は涙がこみ上げてきて、言葉が詰まる。


「うん…ずっといるよ」

絞り出すようにそう言うと、マークはホッとしたような笑みを浮かべ、私を両腕に抱き上げる。

マーク「…もう…絶対に離さないから」

二人、見つめ合い、熱いキスを交わした。





夢回南朝をはじめてみた!!!

お久しぶりですヽ(・∀・)ノ 1年前購入したBloggerのアプリ使おうとすると なぜか落ちてしまいイライラ。 ということでPCから更新! 画像がめんどくさー 実は今絶賛ゲームにハマり中(*´艸`) 今までやってたゲームは今はやってなくて (でも...