第13話 ゴシップガールにご用心!?(後編)
帰宅すると、パパが渋い顔で私を出迎える。
パパ「おかえり」
「門限、遅れてないはずだけど…?」
パパ「ああ、それはいいんだ」
「?」
パパに促されるようにソファに座ると、パパは横のチェストから新聞を手に取る。
(あ…ニューヨーク・ポスト)
ニューヨーク・ポストでは、マークと女優キーラの関係を破局に追いやった悪女として、
私のことが取り上げられていた。
パパ「私も普段こういう類の大衆紙は見ないんだけど」
「たまたまニューススタンドで雑誌を購入しようとして、⚪︎⚪︎の写真が目に入ってね」
パパはよっぽどショックが大きかったのか、悲痛な表情でそういった。
「ごめんね、パパ。驚かせてしまって」
誌面に目を落とすと、『稀代のプレイボーイが計算高いジャパニーズガールに堕ちるまで』
という、悪意に満ちた見出しが躍っている。
「ひどい…見出し」
パパ「ああ。さらにいうと記事は、マークが父親の会社の資金を⚪︎⚪︎につぎ込んでるか」
「⚪︎⚪︎が財産目当てでマークに近づいたとかなんとか、書き立てている」
「そんなの全部ウソだよ。マークはそんな人じゃないし、私も記事にあるようなことは一切ないよ」
パパ「もちろんわかってる。でもね、一つだけ事実が書いてあった」
「え?」
パパ「⚪︎⚪︎が…両親が離婚しているから、自分は玉の輿に乗って幸せな結婚をしたがってるみたいに」
「書かれてた。後半部分は違うだろうけど、両親が離婚、っていうのは、事実だからね…」
「やだ、パパ。私、そんなこと全然気にしてなんかないよ?こんなの…」
私は新聞を丸めると、ゴミ箱へ突っ込んだ。
「本当にゴメンね。私が招いたことだけど…でも、パパには信じて欲しいの。マークと私のこと」
パパ「当たり前だろう?」
「どんなことがあってもお前を信じてる。マークのこともな」
「だが、お前のことが心配で…」
「私は大丈夫だから、安心して」
(私には、マークがついてるから…)
___________________________
ブレアの企画したパーティーの日がやってきた。
マークにエスコートされ会場に足を踏み入れると、店内は閑散としている。
あまりの光景に、私は思わず足を止めた。
(ブレアのパーティーで、こんなことって…)
(あのスキャンダルが、まだ尾を引いてるの?)
マークが立ち止まった私を見下ろして、ニコッと微笑む。
マーク「大丈夫、今からだから」
「そうだよね…」
すると、マークの言葉通りそれから間もなく人々が押し寄せ、フロアは活気に満ち始める。
ホッとしていると、ブレアがシャンパンを片手にご機嫌でやってきた。
ブレア「ハイ、⚪︎⚪︎、マーク」
「ブレア、パーティー盛り上がってるわね」
ブレア「ま、私はウォルドーフだから。汚名なんてすぐに晴らせるのよ」
ブレアは気高い笑みを浮かべる。
(やっぱりブレアはこうでなくっちゃ!)
私がブレアと話し始めると、マークは私にそっと尋ねる。
マーク「飲み物とってくるね。何がいい?」
「ありがと。私は…」
(せっかくのブレア復活パーティーだしな…)
(とはいっても、飲めないお酒を無理して飲んでもね…)
「コーラにする」
マーク「そうくると思った!」
「え、ダメかな」
マーク「ううん、⚪︎⚪︎らしくていい」
ブレア「ほんと、ガキっぽいけど、⚪︎⚪︎らしくていいわね」
そういってブレアはにっこりと笑った。
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去っていくマークの後ろ姿を見送りながら、ブレアは小さく言う。
ブレア「⚪︎⚪︎もマークもよく知ってる私からすると、ああいうゴシップ記事ってほんっとに腹が立つ」
「よくもあんなウソを並べ立てられるわよね」
「…ほんと、困っちゃう」
すると、後ろから声が返ってくる。
??「そうでもないよ?⚪︎⚪︎」
(え?)
ブレアが可笑しそうに肩をすくめて去っていく。
振り返ってみると、その声の主はダンだった。
「ダン!」
ダン「ハイ、⚪︎⚪︎。一つだけ、その道の先輩としてアドバイスしていい?」
「うん…?」
ダン「有名人と付き合うと大変なこともあるけど、それ以上に相手を愛してるから」
「結局周りなんて気にならなくなるよ。だから心配しなくても大丈夫」
「…ありがとう、ダン」
セリーナ「ありがとう、ダン!」
そういってセリーナがダンの後ろから顔を出す。
「あ、今のって、私を励ますように見えて実はノロケ?」
ダン「そうとられても反論はできないかな」
ダンはセリーナの肩を抱き寄せながらそう言った。
幸せそうな二人を見ていると、こっちまで心が和んでくる。
マークが飲み物を手に戻ってくると、ダンとセリーナは手をあげて去っていった。
マーク「なんの話?」
「マークの悪口」
マーク「どんな?」
「マークって…面白くて優しくて…頭がよくてセンスもよくて…カッコイイって話」
マーク「そっかー、ひどいばしょ罵署雑言だな」
「じゃあ、俺も仕返ししていい?」
「…いいよ」
マーク「⚪︎⚪︎って、純粋で優しくて、でも時に怒ると怖くて、そんな怒った顔も可愛くて…」
「正直で嘘がつけなくて、真面目で一生懸命で…夢に向かって頑張ってる」
「なにもかもが愛おしくて…大好き」
「…」
私はぽーっとなってしまった。
それからマークと二人、ソファベンチに腰を下ろして語らい合う。
ブレア主催のパーティーも佳境に差し掛かった頃、私は化粧室へ行こうと席を立つ。
マーク「エスコートするよ」
「ふふ、いいよ、化粧室は」
マーク「そう?」
残念そうにするマークを席に残し、私は一人、フロアを歩いて向かう。
化粧室を出てマークの元へ戻ろうとしたその時、酔った感じの男性がフロアからこちらへ歩いてくる。
何か嫌な予感がして、視線を合わさず通り過ぎようとすると、
男性「あ、キミってマークの女?」
そういって腕を掴まれた。
「離してください」
男性「計算高い女らしいじゃん。でもそういうのキライじゃないよ」
男性がニヤニヤしながら顔を近づけてくる。
「…ちょっと!」
腕を振り払おうとしても力が強くて出来ない。
叫ぼうとしたその時、
??「何をしてる」
誰かが男の腕を掴んで振り払い、私の腕を引き寄せた。
(え…?)
見上げると、そこはレオン。
と、次の瞬間、
マーク「何してるの?」
マークが近づいてくる。
私を腕で包み込むような状態のレオンに、マークは強い口調で言う。
マーク「離してもらっていい?」
レオンはパッと手を離し、マークに近づく。
レオン「違うんだマーク。⚪︎⚪︎が男に絡まれてたから…」
マーク「え…」
「ゴシップ記事のことで変な男が言いがかりをつけてきて、レオンが助けてくれたの」
マーク「…そっか」
そこへ、ブレアが静かにやっていた。
ブレア「さっきの酔っ払いは追い出したから。安心して」
「ありがとう」
すると、ブレは落ち込んだ様子のマークを見上げて言う。
ブレア「自分と同じ環境に⚪︎⚪︎を巻き込んだら、こうなることはわかってたはずでしょ」
マーク「…」
ブレア「⚪︎⚪︎がマークと付き合う限り、『ゴシップガール』や大衆紙にゴシップされて」
「記事を信じる奴らに勘違いされ続ける。この街では当たり前のことだけど」
「私は大丈夫だよ」
ブレア「でもね…正直、私ですら今回のゴシップはこたえたよ…」
「ま、私は生まれながらにしてこの街の女王だからすぐに立ち直ったけど」
「⚪︎⚪︎には…少し荷が重いのかも」
「ううん、私は…」
マーク「無理しないで。⚪︎⚪︎が傷つくことがないように俺が守るから」
「これ以上、一人で傷つかないで」
そういってマークは、強く私を抱きしめた。
To Be Continued……
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