第13話 ゴシップガールにご用心!?(前編)
ブレアの妊娠記事が『ゴシップガール』に投稿された翌朝。
学生「ちょっとこれ見た?」
学生「汚い女だよ。偽善者だったってことでしょ」
学生「化けの皮が剥がれたって感じ」
ブレアの評判は急変していた。
(みんなの憧れの女の子だったのに…)
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お昼休み、ブレアとセリーナとメトロポリタン美術館の外階段へ行くと、
ランチタイムのブレアの定位置には女の子がすでに座っていた。
ブレアは自分の親衛隊へ向かい、つかつかと階段を上る。
ブレア「ハイ、みんな」
女の子たちは冷めた表情でブレアを見上げる。
女の子「チャックとネイト、学校の前で派手にやりあってたよ」
女の子「元カレとその親友か」
女の子「さっさと椅子明け渡したら?女王様」
元・ブレア親衛隊はそれだけ言って、再びランチを再開した。
落ち込んだ顔で戻ってくるブレア。
セリーナ「今日は他のとこでランチ食べよ」
ブレアは力なくうなずいた。
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近くのカフェに入ると、ブレアは気落ちしたようにつぶやく。
ブレア「フランスにでも行こうかな…」
「え?」
ブレア「パパがフランスのお家に私の部屋を用意してくれているから…」
「半年くらい、留学するのも悪くないかと思って」
セリーナ「ダメだよブレア!バカな噂話に負けて私みたいに逃げないで」
ブレア「でも、パパのお家にも行ってみたかったしちょうどいい機会…」
セリーナ「弱気になるなんてブレアらしくないよ」
ブレア「だってもう…私の居場所、ここにはないんだもん」
セリーナ「あなたはウォルドーフだよ?他人にとやかく言われる人間じゃないの!ここで一緒に戦おう?」
「そうだよ、一緒になら乗り越えられる!」
ブレアはセリーナと私の顔を見て、眉を寄せてうつむく。
(強いと思ってたブレアでも、『ゴシップガール』でこんなに参ってしまうんだ…)
セリーナと私はその後も説得をし、どうにかブレアはフランス行きを諦めてくれた。
ブレア「…ブレア・ウォルドーフの名誉挽回は、面白いパーティーを開くしかないかな」
セリーナ「その意気だよ、ブレア!」
ブレア「ほんと、『ゴシップガール』って厄介」
「ブレアもセリーナも、ずっとこんな大変な思いしてきたんだね」
セリーナ「人のこと心配してる場合じゃないよ、⚪︎⚪︎」
「こないだのプレミアのこと、早速『ゴシップガール』に撮られちゃったし」
映画のプレミアでレッドカーペットを歩くマークと私の姿を激写した誰かが早速『ゴシップガール』に
投稿したようで、その夜にはサイトはその話題で持ちきりになっていた。
「ほんと、どこでだれが見てるかわからないね」
ブレア「⚪︎⚪︎が気をつけなきゃいけないのは、『ゴシップガール』だけじゃないかも」
「どういうこと?」
ブレアは少し身を乗り出すようにして私の目をじっと見つめる。
ブレア「動かないでこのまま聞いて。さっきから窓の外で帰ら持った奴らがこっち見てる」
「え…」
ブレア「あれ、パパラッチだよ」
セリーナがさりげなく窓の外を見る。
セリーナ「ほんとだ」
「どうしよう…」
セリーナ「私たちが守るから、大丈夫」
昼休みも終わり、3人は席を立つ。
セリーナとブレアに挟まれるようにして、私はカフェを出た。
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途端、ウロついていた数人の男が私にカメラを向ける。
セリーナ「撮らないで」
ブレア「どいてくれる?邪魔なんだけど」
二人に庇われながら、なんとかその場を切り抜けたと思った次の瞬間、
パシャ!
油断した隙にアップを撮られてしまった。
セリーナ「ちょっと!」
男「プレミアの時ははっきり顔が撮れなかったからね。これでしばらくは飯が食える。ごちそうさん!」
ブレア「待ちなさい!あなたたちみたいな下衆に飯の種を与える筋合いはないわ。データを渡しなさい」
パパラッチは顔を歪ませニヤリと笑う。
男「年上キラーと名高い御曹司マーク・ジョーンズをも狂わせる名門女子高生は」
「その取り巻きからもわかるように、かなり悪女らしい。見出しはこれで決まりだ」
ブレア「ちょっと。待ちなさいって言ってるでしょ!」
男はすぐさまバイクにまたがり走り去っていく。
(想像してた以上に…自分の環境が前とは変わってるみたい)
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数日後、私はマークの家を訪れる。
(会いたいって言われたけど、きっと、あのことだよね)
カフェの前でパパラッチの襲撃を受けた翌日、
大衆紙ニューヨーク・ポストに予告どおりの記事が掲載されたのだった。
マークは私を部屋に通すなり、神妙な面持ちで口を開く。
マーク「ほんとごめん…俺のせいで⚪︎⚪︎にまで嫌な思いさせてしまって」
「マークが謝るようなことじゃないよ。私こそ迷惑かけてごめん」
「もっと、自覚を持って行動するべきだった」
マーク「⚪︎⚪︎は何にも悪くない。あいつらはなんでもセンセーションに書き立てる」
「それが真実か嘘かなんて奴らにはどうだっていいんだ」
「マークはずっとこういうことに耐えてきたんだよね。私も慣れていかないと」
マーク「いいんだよ。こんなことに慣れる必要はない。俺が絶対に守るから…」
「ありがと」
するとマークはニコッと微笑む。
マーク「ところで…その手に提げてるのって、何?」
「ここへ来る途中にあるハーベストってお店で買ってきたの」
マーク「ひょっとしてチーズケーキ?」
「当たり!」
マーク「ここの美味しいんだ。嬉しいな〜」
内線電話を手に取るマーク。
マーク「俺だけど、ハーブティー2つお願いしていい?うん、えっと、レモングラスで。ありがと」
電話を置いたマークに私は言ってみる。
「ハーブティーって、マークのお母さんが好きだったんでしょ?」
マーク「どうして知ってるの?」
「こないだ、レオンに聞いたよ」
マーク「レオン…」
マークは少し戸惑うように瞬きをした。
「一度、レオンの家に行ったことがあるの。その時にマークとの出会いの話を聞いて」
マーク「そうか…レオンの家、行ったんだ…」
マークは頭の後ろで両手を組みながら、歩き出した。
「あ、もちろん、マークとこうなる前だよ?」
するとマークはくしゃくしゃと自分の頭を掻く。
マーク「ヤキモチとか焼かない余裕な男になりたかったのにー!まだまだだな、俺も」
「ごめんね…」
マーク「ううん。カッコ悪いとこ見せてこっちこそゴメン」
「そんなことないよ。誰と会ってても何にも気にならないってのも、ちょっと寂しい気もするし」
マーク「ほんと?」
マークは私の前に戻ってくると、両肩に手を置く。
マーク「じゃあ、仲直りのキスしよっか」
「ケンカしてないけど」
マーク「あれ?そうだっけ?」
「じゃあ…美味しいケーキ買ってきてくれたお礼のキス」
そういってマークの顔が近づいてきたその時、
コンコン…
慌てて私たちは離れる。
ガチャリ
メイド「ハーブティーをお持ちしました」
マーク「あ、ありがとう…」
メイドさんが部屋から出て行くと、マークと私は顔を見合わせて笑う。
マーク「彼女の仕事が早いのを忘れてた」
「ふふ…」
2人、チーズケーキを食べ始める。
すると、マークのベッドの上に数冊の雑誌が置かれているのが目に入った。
「あれ、なんの雑誌?」
マーク「ああ、エロいやつ」
(…え?)
「表紙見る限りそう見えないけど…」
マーク「デジタルでフィルムルックの映像を撮影する方法が載ってるの。俺にとっては相当エロい」
「…なるほどね」
マーク「あ、いま呆れたでしょ?」
「ううん。いつも映画の勉強してて、偉いなーと思ったの」
マーク「ただ楽しいだけだから、偉くはないけど」
「⚪︎⚪︎だって、ファッションの本読むのってただ楽しいからでしょ?」
「たしかに」
ケーキを食べ終わり、マークがいろんな映像技術の本を紹介してくれる。
その生き生きとした顔を、隣から見ていたくなった。
「マーク、本読んでていいよ。あの雑誌、途中にペンが挟んであるし、続き読みたいでしょ?」
マーク「せっかく⚪︎⚪︎が来てくれてるのに、エロい本読めないよ」
「エロいって…あ、じゃあ私も自分の好きな本読んでるから。いつも持ち歩いてるファッションの本」
マーク「じゃあ、デザートの後はのんびり読書にするか」
「うん!」
2人はそれぞれ本を手に、ベッドへ横になった。
するとヘッドボードに寄り掛かっていたマークが、ふと雑誌を横に置き、
寝ている私の頭を自分のお腹の上にのせる。
マーク「こっちの方がラクでしょ?」
「…あ…うん。ありがと」
マークのお腹を枕代わりにしながら文字を目で追うも、私は胸がドキドキしてなかなか本に集中できない。
マーク「⚪︎⚪︎…」
「ん?」
見上げると、マークがヘッドボードから体を起こして私を見下ろしている。
「…何してるの?」
マーク「キスしようとしてるの」
次の瞬間、チュッと軽く唇が触れ合った。
恥ずかしくて私は赤い顔で本を隠す。
「マーク、腹筋ぷるぷるしちゃったんじゃない?」
照れ隠しにそう言うと、マークはクスッと笑う。
マーク「俺は細くてもマッチョなの。なんなら見る?」
「遠慮しとく」
マーク「はい、じゃあ読書に戻りなさい」
そういって、私の頭をポンポンと撫でた。
マークの細いマッチョなお腹枕にも慣れ、私はのんびりと本のページをめくる。
ブレアに似合いそうなカチューシャ特集記事のところで、私はふとマークの方を見上げる。
「そうだ…今度ブレアがパーティーを開くの」
「いま、彼女いろいろ大変だから、マークも参加して盛り上げて欲しいな」
マーク「うん、参加するよ。もちろん、⚪︎⚪︎のエスコート役としてね」
「良かった。ブレアも喜ぶよ」
マーク「ブレアのためでもあるけど、俺は⚪︎⚪︎のこと絶対守るって約束したから」
「これからはいつも⚪︎⚪︎のそばにいたいんだ」
「ありがと…マーク」
そう言うと、また優しいキスが降ってきた。
To Be Continued…….
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