2015年9月1日火曜日

SH 第15話 リスタート(前編)

SH 第15話 リスタート(前編)



マークがパリへ発って一週間後。
私は思わぬ人物から電話を受ける。

「はい…私が、⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎ですが…」

??「初めまして。私、ヴォーグ編集部のグレース・パーカーです」
  「実は昨日、ご友人のマーク。ジョーンズさんより、あなたをご紹介いただきまして」

「…私を?」

??「我が社では学生さんの夏休み期間にインターンシッププログラムを導入していまして」
  「ジョーンズさんから是非あなたを編集部のインターン生にとご推薦いただきました」
  「お聞き及びではなかったようですが…どうされますか?」

(マークが、私のために口をきいてくれたんだ…)

私は携帯を握る手に力を込める。

「是非…よろしくお願いします!」

マークが去ってからというもの、心にぽっかり穴が開いたような気持ちでいたけれど、
ようやく元気が湧いてくる。

(パリに行っても、私の夢を応援してくれてる…)
(マークはちゃんと夢に向かって進んでる。私も、がんばろう!)

ふと携帯を見ると、編集者との通話中にブレアから電話がかかっていた様子。
ブレアのママから、ファッションの勉強になる本を貸してあげると言われていたことを思い出す。

(インターンのことを報告がてら、ブレアの家に行ってみよう)




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私はウキウキした軽い足取りでブレアの家に到着。
ところが、エレベーターから出たところでハッと足を止めた。

(…え、なに?)

廊下でセリーナと弾が神妙な顔つきで対峙し、
その向こうからブレア、ネイト、
チャックが2人を見守っている。

ダン「いったい何が起きてるの?」

セリーナ「…ごめん、今日は帰って、ダン」

ダン「何が起きてるのか知りたいだけだ!心配で君の携帯に電話したら、クラブのバーテンが出たよ」
  「何人かの男と夜中の2時に出て行った君が泥酔して携帯を忘れて行ったって…」
  「男って誰…」
  「まさか、夕べその誰かと…?」

セリーナ「…そう。浮気したの」

するとダンは唇を噛み締めその場を立ち去る。

「ダン…!」

追いかけようとする私の手を、セリーナはそっと掴んだ。

セリーナ「⚪︎⚪︎、いいの」

「どういうこと?浮気は事実なの?」

セリーナ「ううん…そんなことしてない」

ブレア「じゃあなんであんなこと言ったの!」

セリーナ「ダンには浮気したって思われる方がマシだもの…ホントのこと言うよりは」
    「ダンはわたしを買い被ってる。ホントのこと知ったら、もう顔も見てくれないよ…」

(…いったい、どういうこと?)

事情が分からない私に、ブレアは事情を説明してくれた。
昨晩、取り乱した様子のセリーナがブレアのもとを訪れ、
落ち着かせようと鎮痛剤を取りに行って戻ってきたらその姿が消えていたという。
一晩中探したブレアがようやく見つけた時には、
この街に戻ってくる前のようにセリーナは酔いつぶれていた。
その介抱のために集められたのがネイトとチャック。
さっきの私の携帯にあったブレアからの着信は、その召集のためだったらしい。

チャック「ダンに言えないことって何だ?」

ネイト「俺たちには言えるだろ?」

ブレア「そうだよ。私たちの間にタブーなんてないでしょ?」
   「みんな親友だし、セリーナがしてることはたいがい私たちもしてる」

セリーナはようやく重い口を開く。

セリーナ「…私、ジョージーナに脅されてるの」

最近、ジョージーナという女の子がこの街に戻ってきて、
セリーナが困惑しているという話は聞いたことがあった。
セリーナはそのジョージーナに秘密を握られていて、脅されているという。

「秘密って、何?」

セリーナ「…私…人を殺したの」

セリーナの口から飛び出した言葉に、その場にいたみんなが息を飲む。

セリーナ「ジェバードの結婚式の後…」

ブレア「それって…セリーナが突然この街からいなくなった日じゃない」

セリーナ「そう。あの日、式の後ジョージーナと会う約束をしていて、私は彼女がいるホテルへ向かった」
    「とんだサプライズを用意してるとは知らずにね…」

ジョージーナがセックステープを隠し撮りしようとビデオを設置しているとは知らず。
セリーナはホテルへ着いた。
ジョージーナはドラッグの売人ピートと盛り上がっていて、
セリーナにもお酒やドラッグを勧めてきた。
やがてピートと二人きりにさせられ、迫ってくるピートをかわそうとしたセリーナは、
一服キメてからにしない?とピートにコカインを渡した。
ところが、一服したピートは突然、発作で倒れたという。

セリーナ「ドラッグがあることがバレたら私たちが逮捕されるってジョージーナに止められたけど」
    「私はとにかく救急車を呼んだ。その後、ジョージーナとホテルを去った…」
    「でもそのまま帰ることなんて出来なくて、私はピートが無事救急車に乗るのを確かめようと」
    「一人でホテルに戻った…でも、出てきたのは…ストレッチャーに乗せられた遺体袋だったの」

セリーナは苦しそうに顔を歪める。

セリーナ「どうすればいいかわからなくて…ただ、すぐに逃げなきゃって思った」
    「それでそのまま列車に乗ってホテルに泊まって、そこからママに電話した」
    「寄宿学校に転校したいって」

ブレア「…やっとわかったよ…セリーナが別れも言わず去った理由」

ネイト「だけど…彼女がセリーナを追い詰めてる目的は?」

セリーナ「ジョージーナは再び私の前に現れたけど、私はもう変わったって言ってやったの」
    「でもジョージーナは相変わらずだから面白くなかったみたい」
    「それで、いつのまにかダンの友達になってた。サラなんて偽名を使って」

ブレア「ダンに本当のことを言えばいいじゃない」

セリーナ「言ったらあのビデオをダンに見せるって…本物のスナッフフィルムだよ?」

チャック「そんな脅しに屈してたまるか。俺に任せろ。ジョージーナをこらしめてやる」

ブレア「私も手伝わせてチャック。悪いことをするときだけは、どういうわけか相性がいいもの」

チャック「光栄だな」

「セリーナ、心配しなくていいよ。私たちがあなたを支えるから」

ネイト「そうだよ。一人で抱え込むのはもう終わりだ」

セリーナ「…みんな、ありがとう」

今日はこれからセリーナのママ、リリーの結婚式のリハーサルがあるらしく、
セリーナが落ち着いたのを見届けると私たちは解散した。



_____________________________




(セリーナが寄宿学校に行ってたのって、そういう理由だったんだ…)

立ち寄ったカフェでしみじみと紅茶を飲んでいると、レオンとアレックスが店に入ってくる。

アレックス「やあ、⚪︎⚪︎。こんなところで一人で何してる?」

「ブレアの家に行った帰り」

アレックス「しけた顔して…マークのこと、まだ引きずってるのか?」

「…違うよ」

レオン「じゃあ…やっと俺と付き合う気になったか」

嘘とも本気とも取れないそのトーンに、私がゆっくりと首を横に振ると、レオンはフッと笑う。

レオン「わかってる」

アレックス「…何だ今のやりとり」

「えっと…」

レオン「俺は一度…⚪︎⚪︎にフラれてる」

アレックス「え?!知らなかったぞ」

レオン「…言ってないからね」

アレックスはしばらくの間、目をぱちくりとさせていた。




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セリーナのママと、チャックのパパの結婚式当日。
招待された私は、マンハッタンセレブ同士の世紀の結婚式に、胸を躍らせて会場へやってきた。
すでに到着していたブレアの隣に座る。

「ハイ、ブレア」

ブレアは不機嫌そうな顔をこちらに向け、口をとがらせる。

ブレア「この後の披露宴、なんでヴァネッサがネイトと一緒で私はシングル席なわけ?」

「ああ…それは、そういうことだからでしょ」

ブレア「知ってるわよ、それくらい!」

ダンの古くからの親友ヴァネッサとネイトが急接近との噂は『ゴシップガール』で見た。
ブルックリンに住むヴァネッサは大学進学を初めから諦めていたけれど、
ネイトが選択肢は多いほうがいいといってSAT受験の手配をしてくれたのがきっかけとか。

(住む世界が違っても…うまくいく場合もあるんだな)

マークのことを思い出しそうになっていると、ブレアが大きなため息をつく。

ブレア「ネイトと付き合うのは相当大変なのに。ヴァネッサにその覚悟ができてるのかしら」
   「彼は結局セリーナのことを忘れられないし…」
   「あ、でもセリーナに熱をあげる男はヴァネッサは慣れっこか」

(自分を愛してくれてる人のこと、ブレアは気づいてないのかな…)

父バートの付添人として珍しく緊張した面持ちのチャックを、私はそっと見やった。

「そういえば…ジョージーナのこと、どうなった?」

ブレア「私の手にかかれば簡単よ。ジョージーナがセリーナに関わることはもうないわ」

「…それって」

ブレア「イカれたビッチはこの街に私一人で十分だから、矯正施設送りにしてやったの」

「え?!」

驚く私の後ろで、歓声が湧き起こる。
振り返ると、花嫁リリーが娘セリーナに付き添われ、バージンロードの手前に登場。
そして待ち受けるバートの元へ、ゆっくりと歩き出す。

(…素敵!)

リリーの美しいウェディングドレス姿に目を奪われていると、
付き添い終えたセリーナが私の隣に腰を下ろした。

「リリー、ほんと綺麗だね」

セリーナ「ママはもう4度目だから慣れたものだけど」

セリーナはそう言って困ったように笑う。

セリーナ「うちのママって、世間に注目されて批判を受けても…それでも自分の思った道を貫くんだよね」
    「自由に生きてる」

「…強いんだね」

するとセリーナは、私の手の上にそっと手を重ねる。

セリーナ「注目されるって、傷つくことのほうが多くて…マークもずっとそうだったと思う」

「うん…」

セリーナ「これまでの彼は、それこそ私のママみたいに、誰に何を言われても笑ってやり過ごしてこれた」
    「だけど⚪︎⚪︎にだけは同じ思いをさせたくなかったんだよ。どんだけ過保護って感じだけど…」
    「心の底では⚪︎⚪︎を必要としてるくせにね」

セリーナは小さく息をつき、私を励ますように手の甲をポンポンと撫でる。




To Be Continued…..


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