2015年9月1日火曜日

SH 第15話 リスタート(後編)

SH第15話 リスタート(後編)


披露宴会場に戻り、相変わらずご機嫌斜めなブレアとシングル席で華麗な料理をいただく。
宴もたけなわとなり。ダートの付添人、チャックのスピーチが始まった。

チャック「父は欲しいものは必ず手に入れます。リリーも例外じゃなかった」
    「彼女との結婚に漕ぎ着けた父から学んだのは、忍耐の大切さです…」

そこまで言って、チャックは用意していたメモから目を離し、
ブレアの方を見つめながら話し始める。

チャック「…つまり、真実の愛は、あきらめるなということです」
    「たとえその相手が、あきらめてくれと、泣いて頼んでも」

ブレアは、まっすぐにチャックを見つめ返している。

チャック「そしてリリーから学んだのは、許すことの大切さです」
    「いつの日か僕にもすべてを許してくれる相手が見つかることを、心から願っています」
    「新郎新婦に…乾杯」

会場から暖かい拍手が起こり、やがて新郎バートは新婦のリリーの手を取りダンスを始める。
大人のカップルをうっとり眺めていると、となりのブレアがすっと立ち上がった。
そしてチャックの元に歩み寄り、2人はダンスを始める。
チャックは穏やかな表情でブレアを抱き寄せ、ダンスをしながら2人はキスをした。

(チャックもちゃんと掴んだんだ…大切な人を)
(私は…掴むことできなかったんだな…)




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夏休みも終わりに差し掛かった頃、
ハンプトンズの別荘に戻ったセリーナに誘われ買い物に出かけた。

セリーナ「⚪︎⚪︎は夏休みどう過ごしてたの?」

「ヴォーグの編集部でインターンシップ」

セリーナ「すごいじゃない。ヴォーグって大学以上しかインターン受入れて
ないんじゃなかった?」

「…マークが、口添えしてくれたみたいで」

セリーナ「さすがマーク。キメるときはちゃんとキメてくれるね」

「ほんとマークには感謝してる。すごく勉強になったし」
「セリーナは?ハンプトンズはどうだった?」

セリーナ「この夏は静かだった。別荘にこもりきり」

「ダンと一緒に行ったんじゃ?」

セリーナは複雑な表情を浮かべ、首を横に振った。

セリーナ「私たち、別れたんだ…」

(え…)

驚く私に、セリーナはつくろうように笑顔を見せる。

セリーナ「期待通りの私じゃなかったことが、ダンは許せなかったみたい」
    「結局、出会った頃ダンに言われた『住む世界が違う』って言葉…その言葉に私たちはずっととらわれてた」

(住む世界の違い…超えるのって、やっぱり難しいのかな)

するとそのとき、セリーナがニューススタンドを指差す。

セリーナ「ねぇ、あれって…マークのことじゃない?」

スタンドに近づいてみると、セリーナの言う通り、並んだ紙面にマークの記事があった。

(また…ニューヨーク・ポストだ)

もう懲り懲りだと思っていると、セリーナはその新聞を購入。

セリーナ「これ、いい記事だよ」

「え?」

見ると、それはマークのパリでの活動内容を報じるものだった。

セリーナ「マークが撮ったショットフィルムがフランスで注目されてるんだって!」

「ほんとだ。すごい…!私も頑張らないとな」

マークが夢に近づいていことに、私は沸き立つような喜びを覚える。

セリーナ「そういうのいいね。お互いを褒め合える関係」

「…うん」

セリーナ「いつか…2人がまた、前みたいに戻ったらいいのにな…」

と、次の瞬間、2人の携帯が同時に音を鳴らす。

『ゴシップガール』だ…)

私たちは携帯を見て、ハッと息を飲んだ。



ゴシップガール『ニースの別荘にいる友達から入手した情報!』
       『マーク、留学先のパリでも相変わらずみたい』
       『早速、フランスの新進アーティストとイイ仲なんだって!』
       『でも今回は火遊びじゃないっぽい』
       『2人が結婚準備を進めてるって、現地の有力紙も伝えてるよ』



(…結婚準備?)

セリーナ「こんなのガセだよ」

「…」

私は震える心を必死に鎮めようとしていた。




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翌朝、私はセリーナの家で目覚める。
『ゴシップガール』の記事以降、抜け殻のようになった私を心配したセリーナが、
家に泊めてくれたのだった。

セリーナ「⚪︎⚪︎…大丈夫?」

「うん、よく眠れた。ありがとね」

本当は、ほとんど眠ることができなかった。

(でも、セリーナがそばにいてくれて助かったな…)



セリーナと別れ、私はセントラルパークの芝生に腰を下ろし、昨日の新聞を改めて読み返す。
学校のプログラムの一環として撮ったマークのショートフィルムが、現地の映画関係者の目に留まり、
フランスの小さな映画館で上映され話題になっているという。

(…良かったね…マーク)

夢を語るマークのいろんな表情が思い出される。



マーク「恵まれた環境にいることはわかってるけど」
   「俺は、真っ白な状態から本当の実力で勝負して、そこで認めてもらいたいんだ」

マーク「そこまでに熱中できるも何かって、すごく尊いものだと思うんです」
   「それだけの情熱を注げられることを仕事にするのは、最高な幸せなことだと、俺は思います」

マーク「やらないといけないことがあるから。だから…ごめん」



(ちゃんと…夢に近づけて良かった…)

記事を読み進めていくと、最後にはやはり、昨日『ゴシップガール』に書かれていた美人アーティストとの
結婚についての言及もあった。

(…綺麗な人)

相手の女性の写真をぼんやりと眺める。
するとその時、バッグの中で携帯が鳴る。
その画面に表示された名前に、私は目を見張った。

「…マーク?」

マーク「⚪︎⚪︎、久しぶり」

「久しぶり…だね」

マーク「元気?」

「…うん」

マーク「もう夏も終わりだね」

「そうだね…」

私は複雑な思いで、とりとめのない会話を続けていた。

マーク「で、そろそろ…好きな人とかできた?」

「何でそんなこと聞くの?信じられ…」

と、その時。

目の前の芝生に影がさす。
顔を上げると…そこにはマークが立っていた。
マークは電話をポケットにしまい、クスッと笑う。

マーク「怒るってことは…まだ少しは好きでいてくれてるのかな」

「うそ…」

マークの優しい微笑みを前に、私は呆然とただ固まる。
言葉にならない感情が込み上げ、気がつくと頬には涙がこぼれ落ちていた。

(ずっと…会いたかった…)

マーク「⚪︎⚪︎…」

マークは切なそうに眉を寄せ、私の頭にそっと手を置く。
ふと、私が膝の上に広げていた新聞に気づくと、手に取り上げる。

マーク「『ゴシップガール』より正確さに欠けるな」

そう言って呆れたように笑うと、近くにあったダストボックスに新聞を捨てた。

「…記事の内容、間違ってるってこと?」

マーク「正しい部分もある。俺のショートフィルムの話と、彼女が才能あるアーティストだってこと」
   「でもそれ以外は嘘。俺には一切興味ないし」

「どうして断言できるの?」

マーク「彼女には素敵な恋人がいる。同性のね」

「…そうなんだ」

(なんだろ…すごくホッとした)

「あ…」

マーク「ん?」

「今更だけど…おかえり」

マーク「…ただいま」

マークはにっこりと微笑んで前にしゃがみこむと、私を両腕でギュッと抱きしめる。

マーク「パリで必死になって勉強して、自分の力を試すことができたよ」
   「何の肩書きもなしに、フラットな状態から闘えた。自分のやりたいこともさらに明確になったし…」
   「⚪︎⚪︎を好きだって気持ちも、一瞬だって揺るがなかった」

(え…)

マーク「あの時、⚪︎⚪︎を守れなかったのは、自分にまだ自信がなかったからだと思う…」
   「でも、もう俺には何の迷いもないよ。自分にとって大切なもの」
   「絶対に譲れないものがはっきりとわかったから」

「マーク…」

マークは私の涙を優しく拭い、じっと目を見つめる。

マーク「もう絶対、⚪︎⚪︎に悲しい涙を流させたりしないよ…」

そう言われ、私はまた涙があふれてしまい、困ったように笑うマーク。

マーク「⚪︎⚪︎…立てる?」

「え?」

マークはそっと私の手を取った。

マーク「これから、父さんの誕生日パーティーがある。⚪︎⚪︎にも来てほしいんだ」



_________________________




それから私はマークが用意してくれていたドレスに着替え、
マークのお父さんの誕生日パーティー会場に着いた。
隣に座るマークはジョークで笑わせてくれたりするけど、
私は場違いなところにいる気がして恐縮しきり。
パーティーも佳境に差し掛かった頃、マークはそっと私に耳打ちする。

マーク「もう少しで始まるよ」

しばらくすると会場簿照明が落とされ、スクリーンに映像が映し出される。

「これって…」

それはパリで話題になっているというマークが撮ったショートフィルムだった。
中央テーブルに座るマークのお父さんは、真剣な眼差しでスクリーンを見つめる。
やがて上映が終わると、会場には割れんばかりの拍手が沸き起こった。
司会者に促され、ステージへ上がるマーク。

マーク「まだまだ稚拙な作品ではありますが、心血を注いでつくりました」
   「おかげさまで、パリの小さな映画館ではロングラン上映されています」
   「父に笑われるかもしれませんが、これが私からの父への心からのお祝いプレゼントです」

マークはお父さんをまっすぐに見つめ、話を続ける。

マーク「私が目指す場所は、尊敬する父や母が愛してきた映画業界です」
   「でも私の望む仕事はやはり、経営ではなく、映画をこの手で作ることなんです」
   「だから…父の会社の跡を継ぐのは、ここで正式に、辞退させてください」

そういってマイクを置くと、マークはお父さんの元へ歩いていく。
マークのお父さんはため息をつくと、どこか誇らしげな表情でマークを迎える。

マーク「父さん、いつか俺を監督として使ってね」

ケビン「まったく…生意気なヤツだ」

そういって、マークのお父さんは優しい微笑みを浮かべた



マークは私の元へ戻ってくると、そっと私の手を取る。

マーク「⚪︎⚪︎…ちょっと来て」



手を引かれ会場を出ると、マークはまっすぐに前に立つ。

マーク「はぁ…やっと言える」

天を仰ぐようにそう漏らすと、私の目をじっと見つめる。

マーク「聞いて?」

「…うん」

マーク「⚪︎⚪︎、愛してる。ずっと、俺のそばにいて…」

私は涙がこみ上げてきて、言葉が詰まる。


「うん…ずっといるよ」

絞り出すようにそう言うと、マークはホッとしたような笑みを浮かべ、私を両腕に抱き上げる。

マーク「…もう…絶対に離さないから」

二人、見つめ合い、熱いキスを交わした。





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