第4話 SとBの仲間入り?(前編)
セリーナに呼び出され、コーヒーショップへやってきた。
セリーナ「こないだはゴメン。アイビー・ウィーク親睦会で…驚かせたよね」
「ううん、それよりセリーナは大丈夫だったの?突然、あんなことになっちゃって…」
セリーナはふっと息をついて、小さく微笑む。
セリーナ「本当のことなのか気になってるはずなのに、聞かないで私の心配だけしてくれるなんて…優しい子」
「当然だよ。何か。私で力になれることがあったら言ってね」
「こないだの話が事実でも嘘でもどっちでも構わない。ただ、セリーナの支えになりたいから」
セリーナ「ありがと、⚪︎⚪︎」
そういうとセリーナは、オストロフ・センターに入院している弟、エリックの話をしてくれた。
心の病で入院する弟のもとを訪れるセリーナを、
何らかの行き違いでブレアが誤解をしたのが真相だという。
セリーナ「それでね、目下、ブレアと仲直り中なの」
「え、なんだか大変そうだけど…」
セリーナ「ふふ。でも、ブレアはああ見えて…ああだから」
セリーナはおどけたように笑う。
(傍からみると不思議な関係だけど、本当は親友なんだろうな)
セリーナ「それで、仲直りの一つとして、彼女のモデルデビューを応援することになったんだよね」
「ブレアが、モデル?」
セリーナ「うん。ブレアのお母さんがファッションデザイナーなのは知ってるよね?」
「もちろん。エレノア・ウォルドーフでしょ?」
セリーナ「そう。そのエレノア・ウォルドーフが、今度、ヘンリ・ベンデルに入ることになったらしくて」
ヘンリ・ベンデルといえば、マンハッタンにある老舗高級デパートだ。
「へえ、すごい」
セリーナ「そこでブランド広告の顔に選ばれたのが、娘のブレアってわけ」
「で、撮影現場に付き添いで行くことになったんだけど…」
「良かったら⚪︎⚪︎も一緒に来ない?」
「えっ?」
セリーナ「前に言ってたでしょ、ファッション関係の仕事に就きたいって」
「現場を見られる良い機会だから、ね?行こうよ」
「うん!ありがとう、セリーナ」
_____________________________
スタジオで照明を浴びるブレアは、カメラマンの指示に従い、様々なポーズをとっている。
(すごく可愛い!やっぱり画になるなー)
セリーナと二人、スタジオの隅でブレアを見守る。
セリーナ「…ちょっと、硬いかな」
セリーナがボソッともらしたその時、カメラマンがしびれを切らしたようにカメラを下ろした。
カメラマン「ブレア、もっと自然に笑えない?」
ブレア「え…」
私の目からは十分魅力的に見えたけど、写真のプロであるカメラマンと、
ブレアのプロであるセリーナの目は誤魔化せなかったらしい。
セリーナ「ブレア、かなり緊張してるみたい」
その後もブレアは頑張って笑顔を作るけれど、カメラマンは納得いかない様子。
撮影を見守るスタイリストやヘアメイクたちの表情も険しくなってきた。
カメラマン「ブレア、そうじゃないんだよ。エレノア・ウォルドーフの服はもっと躍動感のあるイメージだろ?」
「君はまるで小枝みたいに硬い。いや、ブリキ人形といってもいい」
ブレア「…」
スタッフから呆れたような笑い声がもれる。
すると、セリーナが突然、声を上げた。
セリーナ「ブレア、こっち見て!いい?ここはジャングルだよ、虎のように唸る!ウウーッ」
実際に唸って見せたセリーナに、ブレアの表情が緩む、
ブレア「ウウーッ!」
セリーナ「そうよ、ブレア!じゃあ次は貝の中に立つヴィーナスの気分で!」
「フゥー!」
ノリノリのセリーナの動きにのせられるように、ブレアの表情もみるみる輝いていく。
セリーナ「⚪︎⚪︎も一緒に」
ポーズを取りながら目配せされ、私もブレアを盛り上げようと、なんとかセリーナのポーズを真似してみた。
ブレア「うふふ…」
ブレアは私の動きを見て笑いながらも、随分余裕が生まれたみたいに見える。
スタジオの雰囲気が一気に和らいだ。
セリーナ「ブレア、その調子!次は女豹よ!」
すると、カメラマンが近づいてくる。
カメラマン「ねえ、君達も撮影に参加しないか?」
セリーナ「いえ…私たちはブレアの応援団だから」
カメラマン「少しだけでいいんだけど。ほら、彼女のためにね」
ブレア「お願い。私一人じゃ無理だよ。助けて、セリーナ、⚪︎⚪︎」
ブレアは撮影台からそう言った。
セリーナ「あくまでモデルはブレア。私たちは彼女を盛り上げるためには、あそこでポーズをとるだけですよ」
カメラマン「OK、わかったよ」
私たちはブレアを挟むようにして撮影台に立った。
3人で、まるで学校の中庭でふざけるように、いろんなポーズをとる。
セリーナ「じゃあ次は、気取った感じで…」
「そう、アメリカのポッシュ・スパイスことヴィクトリア・ベッカム風に!」
ブレアが大げさに気取ったフリをして動き、私たちは大爆笑。
笑いながら3人がポーズをとる間、ストロボが何度も焚かれる。
ブレアの緊張がすっかりほぐれたところで、セリーナと私は撮影台から離れた。
「ブレアの表情、明るくなったね」
セリーナ「もう、完璧にエレノア・ブランドと共生してる感じ」
撮影台で一人、ポーズをとるブレアは、見違えるように生き生きしている。
「ブレアの写真、出来上がり楽しみだな」
セリーナ「ヘンリ・ベンデルに大々的に広告が出るらしいから、想像するとわくわくするねー!」
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ところが後日、ヘンリ・ベンデルにデカデカと掲げられたエレノア・ウォルドーフの広告には、
ブレアの屈託ない笑顔と…セリーナと私が写っていた。
ゴシップガール「みんなもう見た?ヘンリ・ベンデルに入るエレノアの広告がこれよ」
「SとBと、あと一人の謎の女、⚪︎⚪︎。もうこれで、謎じゃなくなったわね」
3人がエレノア・ウォルドーフの広告になったことを、『ゴシップガール』はいち早く報じた。
そのせいか、学校ではこれまで以上に他の学生の視線を感じるようになる。
ところが後日、ヘンリ・ベンデルにデカデカと掲げられたエレノア・ウォルドーフの広告には、
ブレアの屈託ない笑顔と…セリーナと私が写っていた。
ゴシップガール「みんなもう見た?ヘンリ・ベンデルに入るエレノアの広告がこれよ」
「SとBと、あと一人の謎の女、⚪︎⚪︎。もうこれで、謎じゃなくなったわね」
3人がエレノア・ウォルドーフの広告になったことを、『ゴシップガール』はいち早く報じた。
そのせいか、学校ではこれまで以上に他の学生の視線を感じるようになる。
学生「ほら、あの子、⚪︎⚪︎とかいう…」
学生「ああ、ほんとだ」
学生「なんであんなフツーの子が?」
(…なんだか、どこにいても落ち着かないな)
私は授業が終わると、足早に学校を出た。
前を歩く学生たちの会話に、ふと耳を傾けるマーク。
彼女らは携帯で『ゴシップガール』の記事を見ている。
学生「これだよこれ、見た?」
学生「エレノアの広告になったってやつでしょ?セリーナとブレアっていつの間に仲直りしたんだろ」
学生「それより、もう一人の、⚪︎⚪︎っていう子」
学生「転校生のくせしていきなりSとBの仲間入り?」
マーク「へえ、この子が⚪︎⚪︎っていうんだ」
学生「…え?」
マークは学生たちの間に割って入ると、『ゴシップガール』の記事に目を落とす。
マーク「めちゃくちゃ可愛いじゃん」
学生「…」
突然現れた『ゴシップガール』常連セレブに驚いたのか、
学生たちは何も言わずそそくさとその場を去っていった。
マーク「…」
__________________________
私はメトロポリタン美術館の外階段に腰を下ろし、ボーッと街を眺める。
「はあ…」
撮影から数日後、セリーナと私は突然、ブレアの母、エレノアから呼び出された。
エレノア「最初に言っておくけど、これは相談ではなく報告よ」
「エレノア・ウォルドーフの広告写真が決まったわ」
そう言って差し出されたポジフィルムは3人で笑いあうショット。
セリーナ「え!話が違います」
「私たちはあくまでブレアを盛り上げようと」
エレノアの隣で、ブレアは不服そうに口を閉ざしている。
エレノア「悪いわね。でも、本当にいい表情をしてるから」
「特に、⚪︎⚪︎の雰囲気、うちのブランドイメージにぴったりなのよね」
ブレア「…」
(まさか3人の写真が採用されるとはな…)
現場のウォルドーフ・デザインのスタッフに失礼にならないようにと、
2人ともエレノアの服に身を包んで行ったのが、仇となった。
すると突然背後から、
??「ワッ!」
「エッ!」
驚いて肩をすくめた私の前に、にっこり笑うマークが回り込んで現れる。
「びっくりした…」
マーク「どうしたの、ボンヤリして」
マークは隣で腰を下ろすと、膝の上で頬杖をつくような格好でこちらを見る。
「うん…ちょっとね」
マーク「広告のこと?」
「知ってるんだ…って、当たり前か」
「もううちの学校どころじゃなく、マンハッタンじゅうに知れ渡ってるよね」
マーク「マンハッタンじゅうの女の子の憧れなんじゃない?」
「まさか!私はほら、エキストラみたいなものだから」
マーク「ウォルドーフ・デザインは優秀なエキストラを見つけてきたんだな」
「からかわないでよ。結構これでも落ち込んでるの」
マーク「どうして?」
「学校にいてもなんとなくみんなの視線を感じるし。いろいろ噂もされてるみたいだからさ」
「こういうの慣れなくて、居心地悪いっていうか…」
マーク「まあ、慣れなくていいと思うよ?」
「マークは…ずっと注目されてるから、そういうの慣れちゃった?」
マーク「慣れたわけじゃないけど、もう諦めてるって感じかな」
「そっか…」
マーク「いろいろ言うヤツもいると思うけど、とりあえず俺はあの広告を見て」
「⚪︎⚪︎、いい表情してるなーって思った」
「やめてよ」
マーク「いや、ホントに。可愛かった」
茶化しているのかと思ってマークの方を少し睨むように見ると、マークが真顔なことに私は驚いた。
マーク「だからさ、もっと胸張っていいんじゃない?」
「噂してるヤツに対して、どーよ、悔しかったら貴女もエレノア・ウォルドーフの」
「顔になって見なさい、ってね」
「ふふ…性格わるい」
マーク「いつもいい子でいる必要ない」
「いい子じゃないよ」
マーク「ああ、確かにいい子ではないか。すぐ口答えするし」
「悪かったわね!」
マーク「おー怖い」
「お父さんはあんなに優しい人なのに、おかしいなー」
「そう、私、パパに似てなくて、叔母さんに似てるの」
マーク「叔母さんって、スタイリストの?」
「そうだよ」
マーク「じゃあ、モデルの素質がやっぱりあるんだ」
「ほら、どっちも女性をいかに美しく見せるかが仕事だから」
「素質って問題じゃないような…」
マーク「照れなくていいから、モデルさん!」
「別に照れてないし!」
軽口を叩きあっていると、マークがすくっと立ち上がり、私を見下ろす。
マーク「ところでモデルさん、ちょっと付き合ってほしいところがあるんだけど」
「どこ?」
マーク「んー、どこでも」
「どこでも?」
マーク「俺とデートしない?」
「忙しいならいいけど」
「…忙しくはない、かな」
マーク「じゃあ、決定」
To Be Continued…..
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