第4話 SとBの仲間入り?(後編)
(そういえば、こっちに来てからずっと学校に慣れるのに必死で)
(こんな風にゆっくり街を歩いたことなかったな)
マークと二人、街を散策しながら、ふとそんなことを思った。
ニューヨークの街のショーウィンドウは、どれも魅力的。ついつい目移りしてしまう。
「あ、あのバッグ可愛いー!」
マーク「いいね。入ってみる?」
「うん!」
マークはスマートにドアを開け、私を中へ通してくれる。
「ありがと」
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ふらっと立ち寄ったそのショップは、センスのいい個性的な商品が揃っていた。
(そんなに高くないし、嬉しいな)
店内を歩いていると、マークがふと足を止める。
マーク「あ…」
そう言って手に取ったブーツに、私は目を奪われた。
「それ、すごくいい」
マーク「よね?⚪︎⚪︎、似合いそう!」
「ほんと?フィッティングしてみようかな?」
早速試してみると、履き心地も抜群。
思わず頰がほころんだ私に、マークが言う。
マーク「お買い上げ、ありがとうございます」
「ひょっとして、このお店の回し者?」
マーク「バレた?」
マークとのショッピングはまるで女友達といるように気兼ねなく楽しめる。
「じゃあ店員さん、他にオススメの商品はあるかしら」
マーク「次にオススメしたい商品は、こちらでございます」
そういってマークが指したのは、アンティーク調のブレスレット。
(これも可愛い…)
「どうしてわかっちゃうの?」
マーク「何が?」
「私の好み。さっきのブーツだってこのブレスレットも、ど真ん中って感じ」
マーク「優秀な店員でしょ?」
「うん!」
マーク「⚪︎⚪︎の専属のコンシェルジュになってもいいよ」
「お願いしていい?ショッピングの時はマークを誘いたいよ。ほんと、女友達と買い物してるみたい」
マーク「…女友達?」
「それくらい気楽に入られるってこと。マークとの買い物楽しいもん」
マーク「俺はそんなつもりないんだけどな」
「え?」
マーク「バリバリ男としてここにいるんですけど?」
そういって、私の目を覗き込む。
「…またからかって!」
マーク「からかってないけど…まあ、俺も楽しいからいっか」
マークは困ったように微笑んだ。
「大丈夫だよ、自分で持てるから」
マーク「いいの」
マークは両手で私の買い物袋を掲げている。
「申し訳ないよ。私ばっかり買い物してるのに」
マーク「じゃあ、わかった。代わりに俺のリクエスト、聞いてくれる?」
「いいよ」
マーク「あれ…食べたい」
そういって視線を送った先は、アイスクリームスタンド。
「いいね!私も食べたい。いこいこっ」
スタンドへ進んでいき、メニューを見上げる。
「ね、どれにする?結構、ボリュームありそう」
マーク「一つだけ買って、二人で食べようか」
「そうだね」
店員はサービスだと言って、トッピングをプラスしてくれる。
「ありがとう!」
(美味しそうー)
「マーク、お待たせ」
ビッグサイズのアイスカップを手に意気揚々と振り返ると、マークはどこか眩しそうにこちらを見ている。
「…どうかした?」
マーク「ううん」
「ね、このキャラメルファッジ、サービスでつけてくれたよ」
マーク「お、ラッキー」
「じゃ、食べよ!」
マーク「…うん、すごく食べたいんだけど」
「あ…そっか!」
スプーンを二つ付けてもらったものの、マークの両手がふさがっていることに、今気づいた。
「食べさせてあげるよ」
マーク「ほんと?」
「うん…」
私は内心ドキドキしながら、マークの口元へアイスを運ぶ。
アイスを食べたマークは瞼を閉じて微笑む。
マーク「んー、幸せ」
私も一口、アイスを食べてみる。
「わあ、美味しいね!これ大きいかと思ったけど、ペロッと食べられそう。いや、食べられる」
マーク「あはは…おかわりしていいよ」
仲良くアイスを食べ合っていると、マークがボソッと言う。
マーク「なんか、感動」
「感動の味だよねー」
マーク「いや、そうじゃなくて…」
「?」
マーク「こういうデート、初めてかも」
「まーた、そんなこと言って」
マーク「ホントだ。だって、道でアイス食べる女の子、周りにいなかったから」
「私が食い意地はってるって言いたいんでしょ?わかってるよ。その通りだから」
マーク「あはは…」
一つのアイスを二人で食べながら、私たちは街を歩き始めた。
するとしばらくして、マークが両手に持っていた荷物を片手にまとめる。
「?」
マーク「手、つないでいい?」
「ダメ」
マーク「なんで?」
「恋人じゃないから」
マーク「なんかショック…」
「はい、これあげるから」
そういってアイスを口に運んであげると、マークはうんうんと頷く。
マーク「アイスは甘いけど、⚪︎⚪︎は甘くないか」
「ヘルシー志向なの」
マーク「なるほどね」
そしてまた一口スプーンですくって差し出すと、マークは拗ねたように口をつぐむ。
マーク「キャラメルファッジ多めにして。せめてもの慰めに」
「はいはい」
アイスを食べて歩きながら、逃げるように学校を出た時落ち込んだ気分が、
すっかり晴れていることに、わたしは気付いた。
けれど、そんな私たちの姿をブレアに目撃されていることは、気付いていなかった。
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1週間後。
「もう最高!夢みたいだよ」
私は、まさに夢のような空間で、興奮を抑えきれないでいる。
セリーナに誘われて、ニューヨーク・コレクションを観に来たのだ。
セリーナ「よかった。⚪︎⚪︎なら絶対喜んでくれると思ったんだ」
「ありがとう。ブレアも来てるんだよね?」
セリーナ「うん、仲の良い女優と一緒に来てるよ」
「女優かぁ…」
(あらためて、別世界って感じ)
ショーの後には、さらなるビッグイベントが待っていた。
(こんなパーティー、始めて来たな)
関係者のみ招待される、ファッションショーのパーティー。
(セリーナのおかげでこんなところにいるけど、一体どうしていいやら…)
私は地に足がつかないような気持ちで会場にいた。
セリーナ「あ、ちょっとゴメン。すぐに戻ってくるから」
セリーナがシリアに呼ばれていき、一人で気後れしているとブレアが近づいてくる。
「ハイ、ブレア」
ブレア「ハイ、⚪︎⚪︎。楽しんでる?」
「ちょっと緊張してるかな」
ブレア「それはいけないわ」
「私の友達を紹介するね。きっと仲良くなれるはず」
すると、ブレアに呼ばれた女性が振り返る。
(え…ウソでしょ!?)
それは、人気女優、キーラだった。
「初めまして…⚪︎⚪︎です…」
キーラ「キーラよ。どうぞよろしく」
キーラと握手を交わし、心臓が高鳴る。
(すっごく綺麗…!)
ため息が出るような美しさに見惚れていると、隣でブレアが呆れたように笑う。
ブレア「どうしたの?宇宙人でも見るみたいに」
「有名人と会ったの初めてだから」
ブレア「大袈裟ね。何か話したら?」
(ブレアはこういう世界に慣れてるんだろうけど…何を話したらいいかわからないな)
もじもじする私ににっこり微笑みかけているキーラが、ふと、会場のある一点を見て目を輝かせた。
キーラ「ハイ、マーク!」
(え?)
その視線の先を見ると、会場に入ってきたばかりのマークの姿が。
(マーク…)
キーラが呼んだ呼んだその名前の主は、私の知っている、あのマークだった。
(…あ、そういえば)
いつだったか、マークの携帯にキーラという女性から着信があったことを思い出す。
キーラはマークに近づいていき、周囲の目をはばかることなくギュッと抱きしめた。
それは、そう見ても挨拶のハグに見えない。
(あの二人って…?)
口をポカンと開けてみていると、ふと、マークと目が合う。
とっさに目を逸らした私を見て、ブレアがクスッと笑う。
ブレア「知らなかった?キーラはマークの彼女だよ」
「…彼女?」
私はなぜか、胸に鈍い痛みを感じていた。
To Be Continued…..
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