(なんだか元気がなさそうだな)
「ハイ、ブレア!」
声をかけると、ブレアは取り繕うように笑う。
ブレア「ハイ、⚪︎⚪︎」
「寝間着姿で何してるの?」
「一応、外出用のスウェット」
ブレア「そうだったわね。ちょっと心配しちゃったわ」
「ブレアの方が心配だよ大丈夫?」
ブレア「…なにが?」
「なんだか様子がいつもと違うけど…教会には礼拝に?」
ブレアは一瞬動揺の色を見せるも、すぐに誤魔化すように切り出す。
ブレア「それより、来週の私の誕生日会のこと知ってるよね?」
「あ、お誕生日なんだ。おめでとう」
ブレア「⚪︎⚪︎のセンスじゃ大したものは望めそうにないし」
「プレゼントはいいから誕生日会には来て。ケイティのお兄さん家でやるの」
「ジャパニーズ・スタイルのパーティーよ」
「へえ、面白そう」
ブレア「そろそろお寿司が恋しくなってきた頃じゃない?」
「お寿司もあるんだ」
ブレア「それだけじゃないわ。日本のアニメを流したり、クールな掛け軸も掛かってる」
「とにかく、伝説となる1日になると思うから。あなたもその目で確かめてみて?」
「伝説って?」
ブレア「ふふ…ネイトが私にファミリーリングをくれようとしてるの」
「それって、結婚指輪ってこと?」
ブレア「どうかしら」
そう言いながらもブレアは頬をほころばせ、さっさと行ってしまう。
(仮面舞踏会ではネイトがなかなか自分を見つけてくれないって怒ってたけど…)
(二人は案外うまくいってたんだ)
ブレアの荷物を持っていたメイドのドロータが、バッグから招待状を取り出した。
ドロータ「よろしければ」
「ありがとうございます」
(プレゼントはいいって言われたけど、やっぱり用意しないとね)
_____________________________
私はプレゼントを買いに、街へやってきた。
ブレアが喜んでくれそうなものを探し回るも、何を選んでもバカにされそうで、
どの商品にもなかなか手が伸びない。
「…困ったな」
マンハッタンじゅうを歩き回り足が棒になっていると、一台のリムジンが私に横付けするように停車する。
リムジンの窓が開き、マークが顔を出した。
マーク「やあ、⚪︎⚪︎」
「マーク!…あ、他のみんなも」
車の中には、レオン、アレックス、アイザックの姿も見える。
マーク「ショッピング?」
「まあ、そんなとこ」
マーク「にしては、あまり楽しそうに見えないけど」
「ちょっと、手こずってて」
マーク「とりあえず乗りなよ」
「え、いいよ」
マーク「遠慮は無用」
「でも…」
勢ぞろいしてるメンバーに気兼ねしたのもあるけど、一番の理由はマークだった。
(こないだの仮面舞踏会から、なんとなく気まずいんだよな)
ためらう私に、マークはにっこりと微笑みかける。
マーク「どうせ俺たちも急いでいるわけじゃないし」
「私も急いでるわけじゃないから歩いていくよ。ありがと」
そういって手を挙げると、マークがリムジンから降りてくる。
マーク「⚪︎⚪︎…」
マークの瞳が、少しだけ不安げに揺れる。
マーク「最近、あんまり話してないし…ちょっと喋りたいんだけど。ダメ?」
「え…」
マーク「みんながいると気を遣うっていうんなら、俺、ここで降りる」
「いいよ、そんなの申し訳ないから」
マーク「じゃあ、ドライブでもしながら」
そういってマークはリムジンに手を差し向ける。
「でも、やっぱり…遠慮してお…」
アイザック「さっさと乗れ!!」
アイザックが苛立ったように声を上げた。
マーク「ザック、⚪︎⚪︎にそんな言い方やめてくれる?」
アイザック「はいはい」
マーク「ってことで、さあ、そうぞ」
(乗るしかないか…)
私は断りきれないまま、リムジンに乗り込んだ。
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向かいの席に座るレオンにまずはご挨拶。
「こないだはどうも」
レオン「あの後ちゃんと帰れたか?」
「うん、ありがとう」
すると、隣のアレックスが耳打ちしてくる。
アレックス「てっきりあんたはマーク狙いだと思ってた」
「ちょっと、アレックス!」
怒った私を見て、マークがアレックスを軽く睨む。
マーク「アレックスまで⚪︎⚪︎のこといじめない!」
アレックス「マークもいじめてるだろ」
マーク「え?」
アレックス「あの後しばらく高みの見物を楽しんでみたが、お前は以外とSっ気がある」
マーク「…なんのこと?」
アレックス「いや、なんでも」
アイザック「ところで、おまえの手にしてるそれは何だ?」
アイザックが私の手元に目をやっていった。
「あ、これは、ブレアの欲しいものリスト」
マーク「ブレアの誕生日プレゼント探してるんだ?」
「うん」
アイザック「とんだお人好しだな」
「え?」
アイザック「ブレアの欲しいものリストから品をチョイスするのは毎年のネイトの役目だ」
「所詮、おまえに買えるような品でもないだろう」
「一応このジュエリーショップには行ってみたけど、値段に驚いてすぐにお店出ちゃった」
アレックス「諦めろ。ブレアに取り入ろうとしてもすぐには無理だ」
「取り入ろうとしてるわけじゃないよ」
「せっかくのお誕生日だし、伝説の日になるっていうからお祝いできたらいいなと思って」
レオン「伝説の日って、あれか」
アレックス「ネイトと婚約発表するんじゃないかって噂だからな」
「みんなも呼ばれてるんだ、お誕生日会」
アイザック「俺たちは毎年恒例のパーティーを楽しみに行くだけだ。おまえみたいに献上品を探すつもりもない」
「ただのプレゼントだよ」
「たしかに高価なものは買えないけど、ちょっとでもブレアに気持ちが伝わればいいなーと思って」
マーク「いいと思う、そういうの。ブレアも喜ぶよきっと」
アレックス「ところで…結局このリムジンはどこへ向かってるんだ?」
マーク「まずはパークアベニュー」
アイザック「マークの例の用事はどうなった?俺はそのために早朝から無理して起きたんだぞ」
レオン「9時が…早朝か」
アイザック「当たり前だ」
マーク「みんなは行ってきて。俺はパークアベニューで降りるから」
アイザック「…は?」
「あの、何?マークの用事って」
マーク「いいのいいの」
「あ、ドライバーさん、あの信号で停めて」
アレックス「主賓が行かないのか?」
マーク「うん。客さえ集まれば楽しめるようになってるから、まあみんな楽しんでって」
リムジンが停車する。
マーク「じゃあ、俺と⚪︎⚪︎はここで」
「え?」
わけがわからないまま、私はマークとともにリムジンから降りた。
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マーク「じゃあ、いきますか」
「マーク…大事な用事があったんじゃ」
マーク「もっと大事な用事ができたから」
「さ、一緒に探そ」
マークはそういうと、ポッケに両手を入れて先を歩いていく。
その背中を見ながら、じんわりと胸が熱くなる。
(ほんとに…優しいんだから)
それから私は、マークに助言をもらいながらブレアが喜びそうな品を探し始めた。
「こういうの、ブレア好きかな」
立ち寄ったショップで手に取ったのは、マカロンカラーのスカーフ。
マークは少し首をひねって、スカーフから視線を私に移す。
マーク「⚪︎⚪︎の方が似合いそう」
「…じゃ、ダメだ」
マーク「ブレアはもっとビビットな色の方が好きかもね」
「なるほど」
スカーフを元へ戻すと、また店内を練り歩く。
いろいろ手にとってはみるものの、なかなか二人ともピンとくるものが見つからない。
「困ったな…」
マーク「いっそ、趣向を変えてみた方がいいのかな」
「趣向?」
マーク「ブレアを『モノ』で悦ばせようとするのは至難の業だし…もっと別のプレゼントもあるのかも」
「別のプレゼントか…」
ふと、教会の前でブレアが言ってた言葉を思い出す。
「ブレア、パーティーの会場で日本のアニメ流すって言ってた」
「それって会場にスクリーンがあるってことだよね」
マーク「うんうん」
「私、前に友達に、おめでとうメッセージ動画をつくってあげたことがあって…」
「すごく喜んでもらえたんだ」
マーク「それいいじゃん」
マークの目がきらりと光る。
マーク「お祝いの動画を作って当日会場で流す!」
「ブレア…喜んでくれるかな」
マーク「絶対、喜んでもらえるよ」
「ていうか、そうなるようにがんばろ?」
「え?」
マーク「協力する」
「マークも手伝ってくれるってこと?」
マークは大きく頷く。
「ありがとう!」
そうして私たちは、パークアベニューから一転、マークの家へ向かうことにした。
To Be Continued…….
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