2015年8月1日土曜日

第4話 パーティーの同伴者

第4話 パーティーの同伴者






??「あれ?⚪︎⚪︎ちゃん」

「え?」

名前を呼ばれて、私は振り返る。
そこに立っていたのはマーク。
隣にはアレックスとアイザックの姿も。

マーク「そっかー、キミもコンスタンスなんだ」

「え?あの…」

私は改めて3人の姿を眺める。
3人ともブレザーに赤のストライプのネクタイ。
コンスタンス・ビラード校と同じ敷地内にある男子校…セント・ジュード学園の制服だ。

ブレア「ちょうどよかった。はい、これ」

ブレアがパーティーの招待状を3人に渡す。

アレックス「キス・オン・ザ・リップス…」

アイザック「パーティーか」

ブレア「最高にイケてるパーティー。今週の土曜日だから、来てね」

マーク「⚪︎⚪︎ちゃんも来るの?」

マークが私に聞く。

「え?あ、私は…」

ブレア「彼女はパーティーには興味がないみたい」

ブレアが遮るように言う。

マーク「興味、ないんだ?」

「え、あの…」

マークだけじゃなく、アイザックやアレックスも私を見る。

「どっちでもない…って言うか、よくわからない」

アイザック「わからない?」

「日本にはあんまりこういうパーティーの習慣ってないから」

アレックス「ふーん」

「高校生がクラブで貸し切りにしてパーティーって、ちょっとびっくり」

ブレア「へぇー、つまんないのね、日本の高校生って」

マーク「わからないんだったら、体験してみるしかないよね」

マークが『キス・オン・ザ・リップス』の招待状をぴらぴらと振ってみせる。

「でも、私は呼ばれてないから」

アレックス「呼ばれてない?」

アレックスがちらっとブレアの顔を見る。

ブレア「招待状、彼女の分はないのよ」

ブレアは悪びれる様子もなく言う。

ブレア「パーティーの招待客リスト作ったの、もうずいぶん前だから」

ブレアは私を見て言う。

ブレア「残念ねー。もう少し早く知り合っていたら、あなたの分の招待状を準備したんだけど」

「…ありがとう。気にしないで」

私はなんとか笑顔を作って返事をする。

マーク「『招待状がないから』なんて堅苦しいこと言わないで、彼女も呼んであげればいいじゃん」

ブレア「そういう訳にはいかないわ」
   「『キス・オン・ザ・リップス』は選ばれた人間しか来られない、特別なパーティーなの」

アイザック「ブレア女王に選ばれた人間だけが、参加できるって訳か。たいそうなことだ」

嫌味っぽく言うアイザックをブレアは軽くにらむ。

アレックス「⚪︎⚪︎だっけ?」

アレックスが突然、私を見て言う。

「はい?」

アレックス「俺の同伴者ってことで、参加してみれば?」

「同伴者?」

ブレア「ちょっと、アレックス」

アレックス「何?なんか問題ある?」
     「俺がパーティーに誰を同伴しようと自由だろ?」

ブレア「そ、それは…」

口ごもるブレアを見て、マークが楽しそうに笑う。

マーク「最高だね、アレックス」

アイザック「さすがのブレア女王様も、王子が選ぶ相手には文句は言えないよな」

ブレア「…」

ブレアは顔を引きつらせたまま、何も言わない。

アレックスは私の顔を見る。

アレックス「っていうことで、話は決まりだな」

「ちょっと待って、そんな勝手に決めないで」

アレックス「は?」

「私、パーティーに行くつもりはないわ」

アレックス「俺の誘いを断るってこと?」

「ええ。悪いけど…」

ブレア「呆れた…」

「え?」

全員が少し驚いたように私を見ている。

マーク「王子のお誘いを断るとはねー」

アイザック「度胸の据わった女だな」

「あの…?」

訳が分からず、私はそばにいたジェニーに目配せする。

「どういうこと?」

ジェニー「どういうことって、そのままの意味」

「そのままって…」

(「王子」ってあだ名だよね?)

マーク「あんまり王子の機嫌を損ねないほうがいいと思うよ。国際問題に発展しかねない」

(国際問題…?)

ますます訳が分からなくなってくる。

「あの…」

アレックスはじろりと私を見る。

アレックス「家はどこ?」

「え…あ、アッパーイーストの…」

目力に負けて、私は素直に自分の住所を言ってしまう。

アレックス「じゃあ、土曜日8時に迎えに行くから」

「え?あの…」

返事も待たず、アレックスはさっさと歩き出す。

マーク「じゃあね」

マークとアイザックもアレックスを追って、去っていく。

「ちょっと…」

見ると、ブレアがすごい顔で私をにらんでいる。

(まずいよ…)

ブレア「来るなら勝手に来ればいいわ」

「え?」

ブレア「ただし、うちのパーティーにふさわしい格好してきてよね」

そう言うと、ブレアはぷいっと私から目をそらした。

(本当にパーティーに行ってもいいのかな…?)

なんだかモヤモヤスッキリしない気持ちのまま、パーティーの日が追ってくる。
とりあえず「パーティーにふさわしい格好」をなんとかしようと、私は服を買いに出かけた。

____________

店員「いらっしゃいませ」

店内には素敵なパーティードレスが並んでいる。
色とりどりのドレスを眺めていると、だんだんテンションが上がってくる。

(やっぱりこういう特別な服を買うのって、楽しいよね)

とっかえひっかえ試着して、やっと「これ」という一枚に巡り会った。

店員「お似合いですよ」

「これなら、王子様と一緒にパーティーに行っても恥ずかしくないですよね?」

店員「王子様…ですか?」

店員さんが一瞬、怪訝な顔になる。

(うわっ!バカなこと聞いちゃった…)

「いや、あの…これ、お願いします」

店員「はい、ありがとうございます」

店員さんは何事もなかったかのように、にっこりと営業用のスマイルを返してくれた。



夢回南朝をはじめてみた!!!

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