2015年8月1日土曜日

第7話 ダンスの相手(前編)


第7話 ダンスの相手(前編)




リムジンが仮面舞踏会の開場前に到着。
運転手が開けたドアから先にアレックスが降り、私に手を差し伸べる。

アレックス「どーぞ」

私はアレックスの手を取り、地面に降り立った。

(え…これって報道陣?)

開場の入り口に敷かれた絨毯を囲むように、カメラを構えた人たちが集まっている。

アレックス「なにをビビってるんだ」
     「あんたはやつらの獲物じゃないから安心しろ」

そういうと、アレックスは私をエスコートして絨毯の上を歩いていく。



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開場に足を踏み入れると、中世の貴族のようなかつらや衣装を身にまとう男女が、仮面をつけて踊っている。

(想像してた以上にすごい世界だな…)

腕章をつけたメディア関係者もいるようで、彼らも仮面をつけていた。

「これってどういうパーティーなの?」
「会場内までカメラを持った人がいるけど、高校生のパーティーじゃないのかな」

アレックス「いい大人と大人ぶったガキが、仮面で本性を隠して騒ぐ場所だ」

「大人ぶったガキ…ね」

そう言って隣を見上げると、アレックスの仮面の中の目が軽く私を睨む。

アレックス「俺はあんたの子守に来ただけだからな」
     「それより…あんたのその仮面はなんだ?」

「家にあったんだけど、変かな」

私はパパが大学の学生からもらったという、あのドミノマスクを拝借してきたのだった。

アレックス「そんなもの家に転がってるとは、あんた同様おかしな家だな」

そういって鼻で笑う。

(アレックスってほんと意地悪だよね)

するとそこへ、頭に大きな羽とティアラを付けた女性が現れる。

(…誰?)

??「ハイ、⚪︎⚪︎。マークがダメなら次は王子?」

その声と皮肉たっぷりなセリフで、正体はすぐに判明。

「そんなところよ、ブレア」

ブレア「ふふっ、あなたのその仮面、とってもユニークね。アレックス、お連れの方は闘牛士?」

(そんなにマタドールっぽいのか…このマスク)

アレックス「というより、牛の方かな。扱いづらいったらない」

ブレア「それはお気の毒さま」
   「⚪︎⚪︎、今日は一つ、お仕事をお願いしたいの。いいかしら?」

「お仕事?」

ブレア「召使いよ」

「え?」

聞くと、今夜、ブレアは彼氏のネイトとゲームを計画しているらしい。
ブレアの仮面を知らないネイトに対し、パーティー中に何人もの『召使い』からヒントを与えられ、
最終的にネイトが『お姫様』のブレアを見つけるというゲーム。

「つまり…私がブレアの仮装をネイトに教えればいいの?」

ブレア「その役目はセリーナ。⚪︎⚪︎は、セリーナへのつなぎよ」
   「ケイティに、マタドールみたいな変なマスクつけてる子って言われたネイトが」
   「あなたのもとに来ると思うから、その時にセリーナの仮装を伝えて」

「その後、セリーナを見つけたネイトがようやくブレアの仮装を知る、と」

ブレア「そういうこと。0時までに私を見つけることができたら、ネイトは見事商品をゲット!」

「商品って…?」

ブレアは少し照れたようにギュッと口を結ぶ。

ブレア「決まってるでしょ?」

そういって、楽しげに去って行った。

(今日もブレアに振り回されなきゃいいけど…)

身を案じていると、アレックスが小さく笑う。

アレックス「闘牛士かと思えばブレア姫の召使いになったり、あんたも忙しいな」

「仕方ないでしょ。ブレアって有無を言わさないんだもん」
「さあ、そうすると、私はセリーナの仮装を把握してなきゃいけないんだ…セリーナ、もう来てるのかな」

アレックス「ああ、ちょうどご登場だ」

アレックスの指さした方を見ると、セリーナは見知らぬ男性にエスコートされてやってきた。
仮面で顔が半分隠れているものの、その美しいブロンド髪と放たれるオーラで、すぐにセリーナとわかる。

「セリーナ!」

声をかけると、セリーナは私だと気付き、頰をほころばせる。

セリーナ「ハイ、⚪︎⚪︎ね!」
    「キマってるじゃない!」

アレックス「赤い布をもたせたら完璧」

セリーナ「ん?赤い布?」

セリーナと一緒に入ってきた男性が飲み物を取りにその場を離れると、セリーナは笑顔を作った。

セリーナ「あの人が相手なの」

「セリーナ、私の前では無理して笑わなくていいよ」

セリーナ「ありがと。でも大丈夫」

(本当はダンと来たかったんだろうな…)

「そうだ。セリーナの衣装を覚えておかないと」

セリーナ「あ、ブレアから聞いたんだ。あのゲームのこと」

「うん。ええと…黄色いドレスに黒い毛皮のボレロ、そしてゴージャスな金のマスクね。オッケー」

セリーナ「じゃあ、彼、戻ってきたから、いくね」

セリーナの後ろ姿を見つめながら、私は小さくため息をつく。

「セリーナとダン、なかなかうまくいかないな…」

すると、呆れたような声が降ってくる。

アレックス「他人の心配より、自分の心配したら?」

「何のこと?」

アレックス「マーク、来てるはずだぞ。今日」

「…そうなんだ」

アレックス「早く見つけないと、誰かと消えちゃうかもな」

私は思わず、フロアにいる仮装した男性たちを見る。

(マーク、どんな仮面被ってるんだろ…)

アレックス「あのな…バレバレ。そして俺に失礼」

「ごめん…」

アレックス「ま、俺も適当に切り上げて帰りたいから、早く探せよ」

そういってポンと背中を押された。

「ありがと…あ、そういうとまた失礼か」

アレックス「いいから早く行け。ここで見届けてやるから」

アレックスは面倒くさそうに追い払うようにしながらも、じっとその場に立って私を見送っている。

(アレックスって、意外といい人かも?)

私は華やかなダンスフロアに出ると、目を凝らし、マークを探し始めた。

(…マークって派手めなタキシードとか、似合いそうなんだよな)
(って、ここにいる人、みんな派手だったか)

と、その時。

??「ひょっとして…⚪︎⚪︎?」

(え?)

声の方を見ると、地味な男性。

(こんな地味な人もパーティーに…あ!)

「ダン?!」

ダン「正解」

「どうしてダンが?だって…」

言おうとして、口をつぐむ。

ダン「知ってる。セリーナ。他の男と来てるんだろ?」

「…ダンは、どうしてここへ?」

ダン「セリーナを探しに来た」

「え?!でも、ダンって…こういうとこ苦手なんじゃ」

ダン「そうだけど…」
  「セリーナと一緒なら、どこへでも行くつもりだよ」

「ダン…」

ダン「『ゴシップ・ガール』で彼女が仮面舞踏会の相手を探してるって知って…」
  「仮面も招待状もないのに、ここへ来たんだ。仮面も招待状もパートナーも連れた彼女を取り戻しにね」
  「あ、このスーツはレンタル」
  「それはいいか」

私は嬉しさのあまり、ダンの腕を掴む。

「ダン、急いで。えっと、セリーナの衣装は、黄色いドレスに黒い毛皮のボレロ」
「そしてゴージャスな金の仮面だよ」

ダン「OK、ありがとう、⚪︎⚪︎!」

ダンは目を輝かせて去っていく。
ネイトに伝えるためにセリーナの衣装を覚えていたことが、思わぬところで役に立った。

(ダンとセリーナ、会えるといいな…)

と、ダンの背中を見送っていて、ハッと我に返る。

(私は、マークを早く見つけなくちゃ!)

再びマークを探し、人の間を縫うようにして歩く。
すると、ある一角のメディアの腕章をつけた人たちが集まっているのが目に入る。

(…何かな?)

近づいて見て、私はその光景に目を見張った。
マイクを向けられ、取材を受けているマーク。
そしてその隣には、寄り添うようにキーラがいる。

(二人で、来たんだ…)

引き返そうとしたその時、後ろから誰かに肩を叩かれる。



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マークは、取材陣に笑顔を向けながら、カメラの向こうに一瞬、⚪︎⚪︎の姿を見つけた。

マーク「!」

取材陣「マーク、こっちにも視線お願い。はい、そんな感じで」

マーク「みんな欲しがるけど、ちゃんと一面に載っけてくれる?」

取材陣「もちろんですよ」

マーク「とか言っちゃって、キーラしか写ってなかったりして」

取材陣「アハハハハ」

マーク「ま、いっか。キーラの映画の宣伝になれば」

そういって再びフロアに目を移すも、⚪︎⚪︎の姿はもう見当たらなかった。



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誰かに肩を叩かれ、私は振り返る。
するとそこにいたのは、仮面をつけた男。

(あ…)

仮面の奥の涼しげな目元で、ピンときた。

「レオン…」

驚きつつも、堂に入ったその仮面に思わず見惚れてしまう。
レオンはフッと笑いをもらす。

レオン「そんなにビビらなくても、別に殴ったりしない」

「いや、なんだかその…良く似合ってる」

レオン「それはありがとう」

「レオンもこういうところ来るんだね」

レオン「まあな」

レオンは何か言いたげに目を泳がせてから、また私に視線を戻す。

レオン「せっかくだから…踊らないか?」

「え、踊るって」

レオン「仮面舞踏会に来て、立ち話だけして帰るつもり?」

「たしかにそうだけど…私、ダンスとかしたことないし」

レオン「リードしてやるから」

ぶっきらぼうにそう言うと、レオンは私の手を引いてダンスフロアに出る。

(初めてだから、どうしていいかもわからないよ…)

レオン「もう片方の手は俺の腰に。そう。それで少しはサマになるから」

音楽に合わせ、見よう見まねでステップを踏む。

「大丈夫?習ったこともないし、すごく適当に動いているんだけど」

レオン「悪く…ない。そういう感じで」

「レオンってダンス上手だけど、こういうパーティーよく来るんだ?」

すると仮面の騎士は、ボソッと呟くように言う。

レオン「気は進まないけど…」

「…付き合い上、仕方なくって感じか」

レオン「まあ、親の力とはいえ名門私立校に通ってるわけだから」
   「そこの奴らとの交流は、通う人間の義務だと思っている」

「なるほどね」

レオン「ちなみに、普段はダンスを見てる側だから、俺。そんなに上手いわけでもない」

「そうなんだ…」

レオン「人前で女と足踏みして何が楽しいんだろう」

「って、今まさにそれやてるけど」

レオン「それは…キミが…」

「?」

レオン「…ひとりでいたから」

(私、そんなに寂しげに映ってたか…)

レオンにリードされ踊りながら、ちょうど、マークトキーラが取材を受ける姿が見える角度になった。

(あの二人…この後、一緒に踊るかな)

すると、頭の上でクスッと笑う声。

レオン「そんなに気になる?」

「えっ?!べ、別に見えてないけど!」

レオンが見透かすように微笑む。

レオン「…何を?」

「あ…えっと、何をって言われると」

(まずい、墓穴掘った)

レオン「まあいい。君をいじめるためにダンスに誘ったわけじゃないから」

と、そこへ、ブレアが不機嫌そうにやってくる。

ブレア「ねえ、⚪︎⚪︎、何呑気にダンスなんてして」

「え?!」

ブレア「レオン、私ちょっと⚪︎⚪︎と話があるの」

レオン「ああ…⚪︎⚪︎、俺、何かドリンク取ってくる」

「ごめんね、レオン」

ブレア「ごめんねじゃないでしょ!いつになったらネイトは私を見つけるのよ」

時計の針は22時を指していた。

「あと2時間か…でも、まだ私のところにもネイト来てないよ?」

ブレア「まったく、ネイトってば何やってるの?もたもたしてるから冷めてきた」

腕組みをしてため息をつくブレア。
するとその向こうから、マークがやってくる。

マーク「⚪︎⚪︎!」

(マーク…!)

思わず顔がほころぶ私を見て、ブレアはふんと鼻を鳴らす。

ブレア「⚪︎⚪︎は私とマーク、どっちが大事なのよ?」

(どっちって言われても…)
(一方は気のおけない男友達で、もう一方は気の抜けない女友達…よね)

「それは、両方だよ」

ブレア「両方ですって?」
   「マスクが奇抜な割には無難なところに落ち着いたわね」

マーク「はいはいブレア、そこまでにしよ。今日はネイトとゲームをしてるんだろう?」

ブレア「そうよ。そのネイトがなかなかゲームを進めないの!」

マーク「でも、⚪︎⚪︎とこうしてるとこネイトに見つかったら、ゲームの楽しさが半減しちゃうんじゃない?」
   「探し出してこそのゲームだから」

ブレア「それもそうね…もうちょっと待ってみる」

そういってブレアは立ち去っていった。
マークはニコッと笑って私の顔を覗き込む。

マーク「来てたんだ」

「うん…」

マーク「さっきあそこから、⚪︎⚪︎のことが見えて」

「あ、そういえば取材してたね」

あたかも今思い出したかのようにそう言うと、マークは私の手を取った。

マーク「⚪︎⚪︎が見えたから取材早めに終わらせてきた。…踊ろ?」

(え…)
(…キーラとじゃなくていいのかな)

するとその時、レオンがドリンクを2つ持って戻ってきた。


To Be Continued…….


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