2015年8月1日土曜日

第5話 真夜中のヒーロー(前編)


第5話 真夜中のヒーロー(前編)




(キーラが…マークの彼女?!)

抱き合う二人から視線をそらすと、マークがキーラから離れ、こちらへ近づいてくる。

ブレア「キーラ、こっちのマークじゃなくて、マーク・ジェイコブスにご挨拶に行かない?」

そう言ってブレアはキーラの元へ向かった。
マークは私の前で足を止める。

マーク「来てたんだ…」

私は顔を上げ、できるだけ笑顔を作った。

「…うん」

(顔、引きつってないかな)

マーク「俺はその…今日のデザイナーの一人のデレク・ラムと知り合いで…誘われたんだけど」
   「ほら、中盤に出てきたエレガントな衣装、覚えてる?」
   「彼ってそういうのが得意なんだよねー」
   「って、それはいいか…」

マークは沈黙を埋めるように言葉を連ねる。

(私も何か、話さないと…)

話題を探そうとするも、出てくる言葉は結局、これだった。

「キーラが彼女だったんだ…凄いね。正直ビックリしすぎだよ」

マーク「…」

「でもお似合いだね、マークってやっぱりスゴイ人なんだなーって思っちゃった」

マーク「…ちょっと訂正いれていい?」

「え?」

マーク「彼女だったのは過去の話。もう別れたから」

「…そうなんだ」

(付き合ってたのは、本当ってことか)
(年上の、あんな有名な女優と付き合ってたんだ…)

マークが急に遠い存在に思えてくる。
動揺を悟られまいと、私は平静を装って口を開く。

「そろそろ帰らなきゃ…またパパが心配してるみたい」

バッグから携帯を取り出して見せ、私は出口へと向かって歩き出そうとした。
すると、マークに腕を掴まれる。

マーク「送ってく」

「ううん、大丈夫」

マーク「…」

マークはそっと手を離した。


_____________________



ブレア「一人で黄昏ちゃって、どうしたの?」

学校の中庭でぼんやりしていると、ブレアが声をかけてくる。

「あ、こないだのパーティー、挨拶もしないで帰っちゃってゴメンね」

ブレア「ううん、いいの。⚪︎⚪︎はショックだったんでしょ?あの場にいられないほどに」

「…何のことかな」

ブレア「とぼけなくていいの。全部わかってるんだから」

ブレアはそういうと、私の隣に腰を下ろす。

ブレア「本当、残念だったわね」
   「でも忠告しておいたと思うけど?マークは無理だって」

(…別に、そういう類のショックじゃないんだけどな…たぶん)

ブレア「じゃあ⚪︎⚪︎、次の金曜日は7時にうちへ来て」

「え?」

ブレア「きっと元気になれるわよ?マークのことなんて忘れちゃいましょ」

「いや、だからそういうんじゃ」

ブレア「わからない人ね」
   「私が夜会に誘ってるのよ?もっと喜んで」

「夜会…?」

ブレア「まあ、ガキっぽく言っちゃうと、お泊まり会ね。年一回の恒例イベント」

「ブレアの家に泊まるってこと?」

ブレア「そう。セリーナがダンとのデートで来られないっていうから、急遽、⚪︎⚪︎を誘ったの」

(セリーナが来ないんだったら、断ろうかな…)

ブレア「まさかと思うけど、今、断ろうと思った?」

「え…」

ブレア「セリーナの補欠名簿に入っていたことを喜ばないなんて、どうかしてるわ」

するとそこへ、マークが通りかかる。

マーク「やあ、⚪︎⚪︎、ブレア」

ブレア「ハイ、マーク」

マーク「なんの話してるの?」

ブレア「ブレア・ウォルドーフの夜会の話。男子禁制よ」

マーク「ああ、秋の一大イベント、お泊まり会か。今年もやるんだ」

ブレア「当たり前でしょ。もう今年で7年目。伝統行事と言っていいわ」

「そんなに続いてるんだ」

マーク「ひょっとして、⚪︎⚪︎も誘われたとか?」

「セリーナの補欠で、ね」

ブレア「じゃあ、⚪︎⚪︎、7時きっかりに来てよ。よろしく」

そういうと、ブレアは立ち上がって手を振る。

「え、待ってブレア、行くと決めたわけじゃ…」

ブレアは振り返ることなく、綺麗な髪を弾ませながら去っていく。

マーク「…押し切られちゃった感じ?」

マークが隣に腰を下ろす。

「かも…」

マークと話すのは久しぶりだった。

(ファッションショーのパーティー以来、なんだか気まずいんだよな)

マーク「ただのお泊まり会だと思ったら大間違いらしいよ」

「そうなの?」

マーク「もしかして、寝袋持って行こうと思ってた?」

「…要らないんだ?」

マーク「聞くところによると、最高級のキャスター付ベッドが用意されてるらしい」
   「まあ、使うかどうかは微妙なところだけど」

「お泊まり会でベッドを使わないって、どういうこと?」

マークは私の質問には答えず、宙を見上げるようにして言う。

マーク「お泊まり会は止めて、俺とデートしてくれない?」

「え…」

マーク「⚪︎⚪︎と行きたいとことあるんだよね」

(あんな素敵な彼女がいた人が、どうして私をデートになんか誘うんだろ)
(…やっぱりチャックが言った通り、遊ばれてるだけ?)

「行きたいとこって、どこ?」

マーク「それは行ってからのお楽しみってことで」

「ふーん」

マーク「じゃ、お泊まり会はキャンセルする?」

「ううん、しないよ」

マーク「ま、ブレアの親衛隊に入るのも、悪くないかも」

「親衛隊に入るつもりはないけど…友達付き合いも大事でしょ?」
「最高級のベッドで眠るのもいい経験だよね」

反応がないのでマークの方を見ると、どこか遠くを見ている。

「…どうしたの?」

マーク「いや、⚪︎⚪︎はそういうのに染まるタイプと思ってなかったから、ちょっと驚いてる」

「私は染まってなんかないよ。合わせてるだけ」

マーク「そっか…まあ、楽しんできて」

そっけなくも聞こえるそのトーンに、胸の奥がチクリと痛む。
マークは立ち上がると、ボソッとこぼす。

マーク「でも、気をつけてね」

(え…?)

意味がわからず聞き返そうとするも、マークは軽く手を上げて行ってしまった。
金曜の夜7時、私はブレアの家を訪れる。
メイドさんに案内されて中へ入ると、家の中には大勢のスタッフがひしめき合っている。

(なにこれ…?)

お泊まり会という響きにそぐわない大人の数に驚いていると、
スタッフに混ざって何やらメイク道具らしきものを運ぶジェニーの姿が。

「…ジェニー?」

ジェニー「ハイ、⚪︎⚪︎!」

「ジェニーもお泊まり会のメンバーだったんだね」

ジェニー「そうなの!憧れのブレアお泊まり会に呼ばれるなんて、夢みたい!」

「で、それは何?」

ジェニー「マニキュアの種類が足りないから、追加で取りに来たの」
    「さあ、行こ!」

ジェニーは嬉しそうに私の手を引いていく。

(…マニキュア?)

ジェニー「⚪︎⚪︎、早く早く。ブレアが待ってるよ」

ブレア「ハイ、⚪︎⚪︎!いらっしゃい」

部屋に入ると、最高級のキャスター付ベッドだけでなく、
マニキュア、ベディキュア専用椅子に、廊下にも溢れていたドレスのラックが並べられている。

「ハイ…ブレア」

ブレア「どうしたの?驚いた顔して」

「だって…お泊まり会って感じじゃないから」

部屋に集まったブレアのお泊まり会メンバーたちは、
ヘアメイクやドレスアップのツールを選ぶのに夢中な様子。

ジェニー「これがブレアのお泊まり会だよ」

ブレア「知った風なこと言ってるけど、ジェニーも今回初参加」

ジェニー「⚪︎⚪︎、楽しみだね!」

「…そう…だね」

ブレア「じゃあ手始めに、マティーニをどうぞ」

ブレアは豪華なフルーツ盛の横に並べられたマティーニを私に差し出す。

「お酒はちょっと…」

ブレア「マティーニを飲むか、秘密をいうか、どっちにする?」

ジェニー「真実か挑戦ゲーム?!」

ブレア「そうよ」

『真実か挑戦ゲーム』とは、アメリカの若者に人気の質問ゲームのこと。
真実を選べば秘密を告白、挑戦を選べば質問者が提示した試練に挑まなければならない。

「…わかったよ。挑戦にする」

私は差し出されたマティーニを一気に飲んだ。

「うっ…」

顔を歪める私を見て、お泊まり会のメンバーが高らかに笑い声をあげる。

ブレア「大丈夫?真実を選んだほうがよかったんじゃない?」

「別に…告白するような秘密もないし」

ブレア「へえ、そうかしら?」

ブレアは意味ありげにそう言うと、私をドレスのラックへ連れていく。

ブレア「全部、エレノアの新作よ。好きなのを選んで」

「え?」

ブレア「さっさと着替えて。街へ出かけるわよ」

エレノアの新作に身を包んだブレア軍団は、一路、夜の街へと向かった。


To Be Continued…..


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