2015年8月1日土曜日

第9話 突然の告白(前編)


第9話 突然の告白(前編)



「…ちょっと…マーク!」

声をあげると、ようやくマークは目を覚ます。

マーク「ん…?」
   「ハッ、ごめん、わっ!」

驚いた勢いで、ソファから転げ落ちた。

「どういうこと?今の」

マークは寝ぼけた目で腰をさすりながら起き上がる。

マーク「…寝ぼけてた」

「寝ぼけて抱きしめるって…」

(やっぱりマークって、私が想像してる以上に大人なんだ)
(今の行動ってかなり女慣れしていないと…)

「…コーヒー淹れてくる」

私は足早にキッチンへ向かった。




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⚪︎⚪︎が出て行くと、マークは頭をかきむしる。

マーク「最悪だ…⚪︎⚪︎にあんなこと…」

抱き枕と眠る癖がよりによって⚪︎⚪︎の前で出てしまたことを、
マークは悔やんでも悔やみきれない。

マーク「…また、遊んでるとか思われたかな」

マークはがっくりとうなだれた。



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(どうしてショック受けてるんだろ…私)
(マークが女慣れしてるなんてわかりきったことなのに…)

私はドリップするコーヒーを見つめ、ため息をつく。
考えつつ、ポストへ新聞を取りに向かう。
なんとなく新聞を眺めながら戻ってきてふと、ある記事に目が留まった。

(嘘…)




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急いでリビングへ戻ると、なぜかマークが正座をしている。

マーク「本当にゴメ…」

「その件はまた後で。ね、これ見て!」

新聞の誌面を開いて見せると、マークはハッとしたように目を見張る。

マーク「え…」

経済面のトップに取り上げられている、マークの父、ケビン。
ジョーンズのインタビュー記事。
その内容は、ジョーンズ・ピクチャーズの後継者を、
近い将来、長男のマークに委ねるというものだった。
呆然とするマーク。

マーク「発表は大学に入るまでしないって言ってたのに…」

小さくそう頷くと、立ち上がりアウターを手にする。

マーク「ごめん、帰るね」

神妙な面待ちで部屋を出て行くマークを見送り、玄関まで来た。




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マークはドアに手をかけると、静かに私を振り向く。

マーク「ありがとう、感謝祭誘ってくれて」

「ううん」

マーク「じゃ、また」

マークは少しだけ笑顔を作って、出て行く。

(昨日…夢を語ってたばかりなのに…)

マークの背中を見送った後も、私はしばらく立ち尽くしていた。



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それから一週間後。
授業が終わり門へ向かって歩いていると、
やはり今日も学校の出口にパパラッチを発見。

(相手は高校生だっていうのに、恥ずかしくないのかな)

新聞記事の影響で、マークはこれまで以上にマスコミに注目されるようになった。
大手映画会社の次期社長の素業を探ろうと、パパラッチ達は躍起になっているらしい。
彼らの前を通り過ぎようとしたところ、後ろから肩を叩かれる。

(ちょっとなんなの…!)

睨みつけるように振り向くと、そこには驚いた顔のセリーナがいた。

セリーナ「…どうしたの?怖い顔して」

「ごめんセリーナ…パパラッチかと思って」

私たちは足早に彼らの群れから遠ざかり、並んで歩く。

セリーナ「本当迷惑だよね」

「大変だろうな、マーク」

セリーナ「大丈夫だよ。マークはああいう奴らをあしらうの得意だから」

「…そうだね」

感謝以来、マークとは会っていなかった。
あの新聞記事によりマークの身辺が騒がしくなったこともあって
連絡しづらいし、マークからも連絡はない。

セリーナ「なんだか元気なさそう」

「そうかな」

セリーナ「ちょっとお茶しない?話したいこともあるし」

「どんな話?」

セリーナ「ヒントは…デビュー!」



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セリーナから難解なヒントだけもらい、パレスホテルのコーヒーショップに入った。
紅茶をオーダーし、本題に入る。

「で、さっきのデビューって?」

セリーナ「ふふ。社交界デビューのことだよ」

「なにそれ」

セリーナ「ニューヨークでは毎年、デビュタント舞踏会っていうのがあるの」
    「そこから女の子は正式に社交界デビュを果たすってわけ」

「おとぎ話の世界みたい。セリーナはその舞踏会に出るんだ?」

セリーナは複雑な笑みを浮かべる。

セリーナ「最初はそういう古臭い伝統って苦手でパスしようと思ってたんだけどね」
    「うちのお祖母ちゃんが15年もデビュタント実行委員の会長やってて」
    「さらに今年はママまで委員になったものだから」

「デビューせざるを得なくなった?」

セリーナ「そういうこと」

セリーナは少し口をとがらせるようにして、テーブルに身を乗り出す。

セリーナ「…でね。⚪︎⚪︎も参加しない?デビュタント」

「え?!」

と、そこへ、紅茶が運ばれてくる。

店員「アールグレイとオレンジペコーでございます」

店員が来てセリーナは口をつぐんだものの、再び喋り出したくてウズウズしている様子。
するとそこへ、レオンとアレックスがやってきた。

レオン「2人お揃いで。やけに楽しそうだな、セリーナ」

セリーナ「今ね、デビュタント舞踏会の話してたんだ。⚪︎⚪︎も参加するって」

「言ってない!」

セリーナ「えー、行こうよ?」
    「お祖母ちゃんがね、新しいお友達も是非連れてきてって言ってるの」

アレックス「あ、コーヒー2つ」

店員「かしこまりました」

アレックスとレオンも同じテーブルについた。

アレックス「いいんじゃないか?行ってくれば」

「そんな他人事みたいに」

アレックス「完全に他人事だ」
     「ちなみに俺はスルーすることに成功した」

アレックスはホッとしたように口元を緩める。

「セリーナ、私はいいよ。ほんとそういうの向いてないし」

セリーナ「私も向いてなんかないよ。今の時代の女性に昔の価値観押し付けてる感じ」
    「正直どうかなと思う。ダンにも言われたな、デビュタントなんて過去の遺物だって」

レオン「ダンの言う通りだな」

セリーナ「レオンも行くくせに?」

レオン「俺は…エスコートを頼まれたから、仕方なくだ」

アレックス「おっと待った。またコイツのエスコートを俺に頼もうとしてるんじゃないだろうな、セリーナ」

セリーナ「その前に⚪︎⚪︎がOKしてくれてないから」

レオン「…行くとして、相手はどうする?」

セリーナ「それはもう、バッチリよね?⚪︎⚪︎」

「え?なにが?」

セリーナ「エスコート役よ。もう決まってるでしょ」

セリーナは私にウインクを投げる。

(マークのこと言ってるんだろうけど、あれから連絡すら取ってないし…)

アレックス「いるならよかった。あんたの子守はもう懲り懲りだからな」
     「忠告しておくが、デビュタントは格式ある舞踏会だから、今度は変なマスクつけていくなよ」

「わかってるよ」

レオン「行くことにしたんだ?」

「いや、決めたわけじゃ」

すると、セリーナがいじっていた携帯から顔を上げる。

セリーナ「え、行くって言わなかったっけ?もうお祖母ちゃんにメールしちゃったよ」

「ちょっと、セリーナ!」

セリーナ「ふふ…」

そうして、なぜか私も社交界デビューすることになってしまった。




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その夜。

(いきなりエスコート役を頼むなんて図々しいかな)
(でも、マークしか頼める人いないし…)

私は携帯を握りしめ、考え込んでいた。

「ここは…駄目元で」

勇気を振り絞り、電話をかけようとするも、すぐ取り消す。

(今は大事な時期だし、やっぱりやめておいたほうがいいか…)

結局、私は自力でエスコート役を見つけることができず、
セリーナが手配してくれた男性と行くことになった。

セリーナ「⚪︎⚪︎と気があうように、日本の文化に精通してる人にしたよ」
    「これで舞踏会で退屈することもないはず!迎えは17時でいい?」



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(日本の文化に精通か…)

もはや、私にとってエスコート役は、マーク以外なら誰でも同じだった。

エミリー「なーに、沈んだ顔しちゃって!」
    「夢の社交界デビューでしょ?!」

それ巣を着て鏡の前に立った私を、エミリーは鏡越しに叱りつける。
エミリーは私のために張り切って、舞踏会の衣装をコーディネートしてくれた。

「友達に誘われて、成り行き上こうなっただけだよ」

エミリー「なんてこと!デビュタント舞踏会に出られるなんてニューヨークじゅうの女の子の憧れよ」
    「女性が備えておくべしたしなみも身につくし、もっと喜ぶべきだわ」

「…たしなもね」

エミリー「何?エミリーにたしなみのこと言われたくないって思ったでしょ?」

「べ、別に…私はソファで酔いつぶれてるエミリーも好きだし」

エミリー「何よ取ってつけたみたいに。感謝祭の夜は目覚めたら二人は」
    「⚪︎⚪︎の部屋にいるみたいだったから、気を使って帰ったわよ?」
    「これこそたしなみでしょ?」

エミリーは意地悪な目つきで笑う。

エミリー「…で、今日のエスコートはマーク?」

「ううん。違うよ」

エミリー「あら…残念」

そして、17時きっかりにチャイムが鳴り、私は家を出る。


To Be Continued…..



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